イージス・アショアは変わる日米同盟の象徴か
ハワイ沖の日米合同演習でSM3の発射試験を行うイージス艦きりしま(10年10月) U.S. NAVY
<日本が米朝会談後に警戒態勢を緩める一方で、高価なミサイル迎撃システムを買う理由>
日本政府は6月29日、北朝鮮のミサイル攻撃に対する自衛隊の警戒監視レベルを緩和した。
日本は16年8月以来、北朝鮮のミサイル発射実験を受けて、迎撃ミサイルSM3を搭載した海上自衛隊のイージス艦を常時展開し、厳戒態勢を敷いてきた。さらに北朝鮮のミサイルが北海道上空を通過した17年8月からは、地上配備型迎撃ミサイルPAC3の3個部隊も展開させていた。
これまでイージス艦は日本海で24時間態勢の警戒を続けてきたが、緩和後は兆候があれば24時間以内に展開できる態勢に改めた。PAC3も、24時間態勢の警戒監視は解除された。
政府関係者の一部は引き続き警戒を呼び掛けているが、6月12日の米朝首脳会談で日本の懸念が少なくともある程度低下したのは確かなようだ。同会談後、菅義偉官房長官はこう語った。「日本にいつミサイルが向かってくるか分からない状況では明らかになくなった」
だが短期的な楽観論の一方で、長期的な防衛力強化は着々と進んでいる。政府関係者によると、防衛省は導入予定の地上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」にロッキード・マーティン社製の最新レーダーSSRを搭載する方針だ。
貿易不均衡是正の道具に
SSRの探知距離は1000キロ超で、イージス艦搭載レーダーの2倍以上。23年度の運用開始を目指しており、配備候補地の秋田県と山口県から朝鮮半島全体を24時間態勢で監視可能になる。同システムが稼働すれば、海上自衛隊のイージス艦は東シナ海での中国の監視任務に振り向けられる。
この種の日本の動きについて、英ワーウィック大学のアジア研究者クリストファー・ヒューズは北朝鮮の脅威の「特大化」と呼び、日本は北朝鮮を隠れみのにして防衛力の強化を進めているが、真の狙いは中国にあると指摘した。日本から見れば、国際社会で悪役扱いされる北朝鮮を非難するほうが、中国を非難するより政治的コストが小さい。
ただしトランプ時代の今、日本のミサイル防衛態勢強化は別の意味で重要な意味を持つと言えるかもしれない。イージス・アショアの導入コストは当初の見積もりの最大2倍に膨らむ公算が大きく、トランプ米大統領が強く求める日米貿易不均衡是正に貢献しそうだ。