最新記事

事件

フィリピン今度は副市長暗殺 1週間で首長3人殺害の異常事態に

2018年7月9日(月)16時45分
大塚智彦(PanAsiaNews)

監視カメラに記録された襲撃の瞬間  ABS-CBN News/ YouTube

<フィリピンで今度は副市長が暗殺された。背景には麻薬組織がからんでいると言われており、ドゥテルテ大統領の麻薬犯罪取り締まりが始まってから15人の市長と副市長が殺害されるという異常事態になっている>

フィリピン・ルソン島首都圏マニラ郊外にあるカビテ州トゥレス・マルティレス市で7月8日午後3時過ぎ、アレクサンダー・ルビガン副市長が乗った車両が正体不明の男に銃撃され、副市長は即死、同乗の運転手、警護員が死傷する事件が起きた。

フィリピンでは7月2日にルソン島南部バタンガス州タナウアンのアントニオ・ハリリ市長がスナイパーに狙撃されて死亡する事件が発生。さらに翌日の7月3日には同じルソン島北部のジェネラル・ティニオ市のフェルディナンド・ボテ市長(57)が自分の車で移動中に正体不明のガンマンから銃撃され、収容先の病院で死亡するという、1週間で現職の市長2人、副市長1人が相次いで「暗殺」される異常な事態となっている。

ドゥテルテ大統領は「犯人に司法の裁きを受けさせる」として犯人逮捕に全力を挙げるように警察に指示しているが、これまで3件の事件の容疑者の逮捕はおろか、特定にすら至っていないのが現状だ。このためそれぞれの殺害事件は単独の犯行とみられているものの、ハリリ市長は麻薬犯罪に厳しい一方で自身の名前も麻薬取引に関連して挙がるなどしていたことから、麻薬事案などなんらかの関連が3件にあるかどうかについても警察は調査を始めている。

大統領の与党所属市長も銃撃で死亡

市庁舎前で職員らと並んでいたハリリ市長を、約150メートル離れた藪から「特別な訓練を受けた狙撃手による犯行」(メルカド市警本部長)で暗殺するという衝撃的な事件から一夜明けた7月3日、マニラの北約50キロにあるジェネラル・ティニオ市のフェルディナンド・ボテ市長(57)が殺害される事件が起きた。

訪問先の事務所の監視カメラによると、ボテ市長が乗車した車が事務所を出て、道路に曲がろうと停車したその時に、右側から車に近づいた正体不明の男が複数の銃弾を車内に向けて発砲する様子が残っていた。撃たれたボテ市長は緊急搬送された収容先の病院で死亡した。

ボテ市長はデゥテルテ大統領の与党「PDPラバン」に所属しており、政治的背景があるのかどうか警察は現在調べている。大統領報道官は事件に関して「いかなる殺人についても国家の任務を遂行することを約束する」として犯人逮捕に全力を挙げるよう治安当局に指示した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

COP29、会期延長 途上国支援案で合意できず

ビジネス

米債務持続性、金融安定への最大リスク インフレ懸念

ビジネス

米国株式市場=続伸、堅調な経済指標受け ギャップが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米景気好調で ビットコイン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中