タイ洞窟内の少年救出作戦開始 作戦成功祈る一方、早くも洞窟観光地化や映画化も
タイならではの事件への対応
そんな必死の現場の空気とは別に、いかにもタイらしい現象や事案も次々と発生しているが、こちらはあまり海外では伝えられていない。
少年たちが洞窟内で発見され、とりあえず無事が確認された時点で地元チェンライ県などは「洞窟を観光資源として売り出す」方針を明らかにしたのだ。タイ観光省とチェンライ県観光課は「タムルアン洞窟は現在タイ国内だけでなく、世界の注目を集めている」として洞窟への道路、関連設備の整備を今後迅速に進めて「チェンライの一大観光地としてPRしよう」と協議を進めることになったと地元報道は伝えた。
また仏教徒が大半のタイだけに、著名な高僧がまだ少年らが発見されていない時点で現場を訪れ、洞窟内を透視。「少年の魂を発見したので生存は間違いない」と発言した。その後に無事が確認されたことが報じられ、国民の多くが夢を託す宝くじで13番に絡む数字や高僧が乗車してきた車両のナンバーの数字のくじがあっという間に売り切れたという。
ドイツに滞在していることが多いワチラロンコン国王から少年の親たちを励ますために贈られたという「国王の肖像画」のニュースや国王の子息が洞窟内の少年らに当てた励ましの手紙がニュースで取り上げられるなど、お国柄といえばそれまでだが、少年らに関係した「自国ネタ」の報道がニュースを飾っている。
まだ今後の展開が見えない状況で、すでに今回の事件の映画化の話しも一部では出ているという。タイの3面記事を伝えるネットの掲示板などでは「英人ダイバーと最初に話した少年は、地元の教会で英語を勉強していた優秀な少年だった」などという書き込みが続いているという。
モスクワでサッカー「ワールドカップ2018」を開催中のFIFA(国際サッカー連盟)は「救出されたら少年13人を決勝の試合に招待するとしており、8日午前から始まった救出作戦で全員が無事に救出されれば、決勝の試合のスタンドで声援を送るタイの少年サッカー選手の姿が見られることになるだろう。
※情報を更新しました
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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