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迷走を経て、韓国の国産ロケット、試験打ち上げに大きく近づく

2018年7月17日(火)18時30分
鳥嶋真也

今年10月に試験打ち上げ

KARIでは現在、今年10月にKSLV-IIの試験打ち上げを行うことを計画している。この試験打ち上げは、ロケットの2段目のみで打ち上げるもので、人工衛星は搭載しない。

今回の試験が成功したことで、この試験打ち上げに向けた準備がほぼ整ったことになる。この試験打ち上げで、開発したエンジンが実際の飛行の中で動くことなどを確認。続いて1段目をもつ完成形の開発を行い、2021年の完成、そして初打ち上げを目指している。

もっとも、課題はまだ多い。今年10月の試験打ち上げで新たな問題が見つかったり、打ち上げ自体が失敗したりする可能性は高い。もちろん、そうした課題を見つけることが試験の目的でもあるので、ある程度は織り込み済みだろうが、深刻なものなら開発がさらに遅れることもあろう。

さらに、1段目に大型エンジンを4基装着して噴射する技術も、韓国にとっては初めて手がける要素であり、これから難航する可能性は大いにある。

ロケットの完成後も、どう維持、発展させていくかという問題もある。韓国が独自のロケットを保有することは、主に安全保障の観点から価値があることは間違いない。しかし韓国国内の需要だけでは、年間の打ち上げ回数はせいぜい1機か2機程度であり、運用の効率化や低コスト化などを考えると、他国から打ち上げ受注を取り、打ち上げ頻度を高める必要があろう。

だが、イーロン・マスク氏の「スペースX」など、他国の宇宙ベンチャーなどが擁する低コストかつ実績もあるロケットに、新参者のKSLV-IIがどこまで立ち向かえるかは未知数である。

とはいえ、KSLV-IIの開発が、韓国の宇宙開発の自立に向けた大きな一歩であることは間違いない。衛星打ち上げで北朝鮮に先を越された焦りを乗り越え、ロシアとの不幸な関係という回り道を経て、ようやく正しい道を進みつつある。

KSLV001.jpg韓国の新型ロケット「KSLV-II」の想像図 (C) KARI

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