最新記事

韓国

迷走を経て、韓国の国産ロケット、試験打ち上げに大きく近づく

2018年7月17日(火)18時30分
鳥嶋真也

「韓国型ロケット」KSLV-II

羅老号での苦い経験から、KSLV-IIは他国の技術に頼らず、韓国の技術だけで完成させるロケット、別名「韓国型ロケット」として開発が始まった。

KSLV-IIは高度600〜800kmの地球低軌道に約1.5トンの打ち上げ能力をもち、世界的には小型〜中型に分類されるロケットである。小型の衛星の打ち上げに特化しているため、韓国が得意とする小型衛星ともマッチする。

つまりKSLV-IIが完成すれば、国産衛星を国産ロケットで打ち上げられるようになり、宇宙へのアクセスの自律性が確立でき、さらに他国への売り込みも図れる(ただし発射場の立地上、気象衛星や通信衛星がよく打ち上げられる静止軌道への打ち上げはできない)。

開発において大きな壁として立ちふさがったのは、ロケットエンジンだった。KSLV-IIでは推力75トンf級の大型エンジンと、7トンf級の小型エンジンの2種類を開発し、1段目に大型エンジンを4基、2段目に1基、3段目に小型エンジンを1基装着する。

もともと羅老号開発の前に国産開発を目指していたこともあり、ある程度エンジンの技術はあったものの(ただしウクライナの協力があったとされる)、開発は難航した。

そして最大の障壁が政治だった。開発がスタートして3年が経った2012年、朴槿恵・前大統領はその選挙戦中に、「2020年に月に太極旗を立てる」という公約を発表。そのためにKSLV-IIの開発を約1年ほど前倒しすることを命ずるなど、計画は迷走した。結局、開発者らからの「無理だ」という声、そして朴氏が罷免されたこともあって、スケジュールは比較的現実的なものに再設定されている。

KSLV003.jpg開発の大きな障壁となった、推力75トンf級のロケットエンジン (C) KARI

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国「米の独断専行に最後まで付き合う」、関税引き上

ビジネス

焦点:米大統領はどこまで株安許容か、なお残る「トラ

ビジネス

中国人民元基準値、23年以来の元安水準に設定

ビジネス

英住宅価格、3月は前月比-0.5% 減税終了で需要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 5
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 6
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 7
    フジテレビが中居正広に対し損害賠償を請求すべき理由
  • 8
    反トランプのうねり、どこまで大きくなればアメリカ…
  • 9
    流石にこれは「非常識」?...夜間フライト中に乗客が…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 7
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 8
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 9
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中