迷走を経て、韓国の国産ロケット、試験打ち上げに大きく近づく
「韓国型ロケット」KSLV-II
羅老号での苦い経験から、KSLV-IIは他国の技術に頼らず、韓国の技術だけで完成させるロケット、別名「韓国型ロケット」として開発が始まった。
KSLV-IIは高度600〜800kmの地球低軌道に約1.5トンの打ち上げ能力をもち、世界的には小型〜中型に分類されるロケットである。小型の衛星の打ち上げに特化しているため、韓国が得意とする小型衛星ともマッチする。
つまりKSLV-IIが完成すれば、国産衛星を国産ロケットで打ち上げられるようになり、宇宙へのアクセスの自律性が確立でき、さらに他国への売り込みも図れる(ただし発射場の立地上、気象衛星や通信衛星がよく打ち上げられる静止軌道への打ち上げはできない)。
開発において大きな壁として立ちふさがったのは、ロケットエンジンだった。KSLV-IIでは推力75トンf級の大型エンジンと、7トンf級の小型エンジンの2種類を開発し、1段目に大型エンジンを4基、2段目に1基、3段目に小型エンジンを1基装着する。
もともと羅老号開発の前に国産開発を目指していたこともあり、ある程度エンジンの技術はあったものの(ただしウクライナの協力があったとされる)、開発は難航した。
そして最大の障壁が政治だった。開発がスタートして3年が経った2012年、朴槿恵・前大統領はその選挙戦中に、「2020年に月に太極旗を立てる」という公約を発表。そのためにKSLV-IIの開発を約1年ほど前倒しすることを命ずるなど、計画は迷走した。結局、開発者らからの「無理だ」という声、そして朴氏が罷免されたこともあって、スケジュールは比較的現実的なものに再設定されている。
開発の大きな障壁となった、推力75トンf級のロケットエンジン (C) KARI