最新記事

汚職

マレーシアのナジブ前首相、汚職疑惑で逮捕起訴 有罪なら禁固20年に鞭打ち刑も

2018年7月4日(水)17時19分
大塚智彦(PanAsiaNews)

7月4日、マレーシアの検察当局は、政府系ファンド「1MDB」からの資金流用疑惑を巡り、ナジブ前首相を起訴した。高等裁判所に入廷するナジブ前首相(2018年 The Star Online / YouTube)

<クアラルンプールを「イスラム系金融界のシティ」にするという触れ込みで政府系ファンドを設立したマレーシアのナジブ前首相。だがそれは彼の汚職の資金源だった>


マレーシアの検察当局は7月4日、ナジブ・ラザク前首相を背任と腐敗防止法違反の容疑で起訴した。前首相は前日3日に自宅でマレーシア汚職対策委員会(MACC)によって逮捕されていた。

MACCや検察当局は、ナジブ前首相が在任中に自ら設立した政府系ファンドの「ファースト・マレーシア・デベトップメント(1MDB)」と元子会社である「SRCインターナショナル」から、2013年に前首相の個人口座に4200万マレーシア・リンギット(約11億5000万円)が不正入金されたことが、背任などに当たるとして逮捕・起訴に踏み切った。

マレーシアで首相経験者が起訴されるのはナジブ前首相が初めてのケースとなる。3件の背任罪と1件の腐敗防止法違反容疑で有罪となれば、ナジブ前首相は最長で20年の禁固刑とむち打ち刑、さらに多額の罰金刑が科される可能性があるという。

4日午前8時過ぎに首都クアラルンプールの初級裁判所に出廷したナジブ前首相は、検察側が罪の重大さを理由に裁判を高等裁判所に送致したことを受けて、同日午前10時半ごろから高等裁判所での罪状認否に臨んだ。

ネクタイ、背広姿のナジブ前首相は報道陣の問いには一切答えず、支援者や親族には笑顔で対応していた。


4日、高等裁判所に出廷するナジブ前首相 The Star Online / YouTube

「マハティール政権の報復」

ナジブ前首相は逮捕された3日夜、用意していたビデオメッセージを発表。その中で「私と家族に関する疑惑は全て事実ではない」と全面的に疑惑を否定するとともに、「これはマハティール政権による政治的な報復であり、法廷で無実を明らかにしていきたい」と、法廷闘争を通じて無実を証明する意向を示した。

マハティール首相は5月9日に実施された総選挙で「腐敗したナジブ政権打倒」を掲げて与党を離脱、自ら率いた野党連合が大勝してマレーシア初の政権交代を実現させた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア新型中距離弾、実戦下での試験継続 即時使用可

ワールド

司法長官指名辞退の米ゲーツ元議員、来年の議会復帰な

ワールド

ウクライナ、防空体制整備へ ロシア新型中距離弾で新

ワールド

米、禁輸リストの中国企業追加 ウイグル強制労働疑惑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 9
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 10
    巨大隕石の衝突が「生命を進化」させた? 地球史初期…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中