最新記事

アメリカ社会

売春宿オーナー、牧師が支持し共和党議員へ 世も末なトランプ時代のアメリカ

2018年6月28日(木)15時40分

デニス・ホフ氏を支持するビクトル・フェンテス牧師と妻のアネットさん。米ネバダ州バーランプで15日撮影(2018年 ロイター/Steve Marcus)

米国で最も有名な「ピンプ(売春婦の元締め)」を自認し、ストリップクラブのほか、売春宿を数軒経営するその男性は、保守的なキリスト教有権者から多くの支持を受け、11月の中間選挙でネバダ州議会に共和党議員として議席を獲得する見通しだ。

男性の名はデニス・ホフ。彼の政治的躍進は、「トランプ時代」において有権者の意識が根本的に変化し、共和党がかき回されただけでなく、米国政治がひっくり返されたことを示している。

「これがまさにトランプ運動だ」──。ネバダ州北部のカーソンシティ近郊にある、自身が経営する売春宿「ムーンライト・バニーランチ」でロイターのインタビューに応じたホフ氏は語った。この宿は、ケーブルテレビのリアリティ番組に登場したこともある。

「人々は、自身の倫理観や宗教信条をとりあえず脇に置き、正直な人間を当選させようとしている」と語る71歳のホフ氏。「トランプ大統領がその草分けだ。彼は、正直政治におけるコロンブスだ」

今月12日、州議会下院選に向けた共和党候補を指名する予備選で、ホフ氏が勝ったとのニュースを聞いた時、キリスト教福音主義のビクトル・フェンテス牧師は、目を閉じて祈ったと話す。

3度の離婚暦と「ピンプの美学」という著書があり、「パーランプのトランプ」として選挙戦を戦っているホフ氏からネバダ州を守るよう、フェンテス牧師が神に祈ったわけではない。

キリスト教系グループは、同州の合法な売春産業に長年抗議していたが、その産業でのし上がったホフ氏の経歴に目をつぶる決意をしていた同牧師は、彼の勝利を神に感謝した。

「福音主義者がなぜ自称ピンプを支持できるのかとよく質問される」と、同牧師は、パーハンプの自宅で語った。人口3万6000人を抱え、自治体が設置されていない非法人地域にあるこの町は、ホフ氏が11月の州議会選の最有力候補と目されている選挙区における最大のコミュニティーだ。

その理由は簡単だと、フェンテス牧師は言う。

「政治家は、口では良いことを良い、売春婦と寝たりせず、良い隣人であるかもしれない。だが政治家が下す決定を見ると、心の中に悪が潜んでいることが分かる。デニス・ホフ氏はそれとは違う」

ホフ氏は、宗教の権利などを守ってくれると感じていると、同牧師は話した。

ホフ氏が立候補している共和党寄りの選挙区で聞いたところ、7人の福音派が、トランプ氏のように裕福な実業家であり政治のアウトサイダーでもあるホフ氏は、政治をクリーンにし、特殊利益を代弁する団体やその資金に縛られないだろうと思い、彼に投票したと語った。


デニス・ホフ、ビジネス(売春宿)を語る  KPVM / YouTube

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

イオン、イオンモールとディライトを完全子会社化

ワールド

中国実弾演習、民間機パイロットが知ったのは飛行中 

ビジネス

中国の銀行、ドル預金金利引き下げ 人民銀行が指導=

ビジネス

日経平均は大幅反落、一時3万7000円割れ 今年最
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:破壊王マスク
特集:破壊王マスク
2025年3月 4日号(2/26発売)

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 3
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身のテック人材が流出、連名で抗議の辞職
  • 4
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 5
    日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻…
  • 6
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 7
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 8
    老化は生まれる前から始まっていた...「スーパーエイ…
  • 9
    【クイズ】アメリカで2番目に「人口が多い」都市はど…
  • 10
    令和コメ騒動、日本の家庭で日本米が食べられなくな…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 3
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 6
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 7
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 8
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中