最新記事

選挙

インドネシア統一地方首長選、今日投開票 警官銃撃やテロ容疑者逮捕で緊張高まる

2018年6月27日(水)12時14分
大塚智彦(PanAsiaNews)

ワールドカップの飾り付けがなされたバリ島の投票所 REUTERS/Johannes P. Christo

<全国で地方首長選の投開票が始まったインドネシア。だが、それに乗じて分離独立を目指す勢力などがテロを計画、緊迫が続いている>

インドネシアは6月27日、全国17州、115県、39市で一斉に首長を選ぶ統一地方首長選の投開票日を迎えた。対象地域の38万7598カ所の投票所には投票の始まる同日午前7時前から警察官や国軍兵士などが警戒警備のために派遣され、重々しい雰囲気の中で約1億5200万人の有権者による投票が始まった。投票は同日午後1時には締め切られ、即日開票され同日夕から夜にかけて大勢が判明する見通しだ。

今回の統一地方首長選を皮切りに8月には2019年の大統領選の正副立候補者が締め切られ、実質的な大統領選がスタートするとともに2019年4月17日の大統領選と同時実施の国会議員選挙も始動する。大統領選、国会議員選は有権者の直接投票で選ばれるため、国民の関心は極めて高く、その前哨戦ともいえる地方統一首長選は主要州で激戦が予想されるなど、インドネシアでは本格的な政治の熱い年がスタートした。

27日の投票日を狙った爆弾テロが事前に摘発され、テロ容疑者が事前に13人も逮捕されたことや警備のために派遣された警察官が搭乗した航空機が銃撃されるなど、この日を狙ったテロの嵐が吹き荒れる予兆のようなものが今のインドネシアには満ち溢れている。

ジャカルタの日本大使館も26日に在留邦人に対する「注意喚起」をだして投票所などに近づかないよう求めている。

投票日テロ計画の13人を逮捕

6月2日、国家警察対テロ特殊部隊「デンスス88」がスマトラ島リアウ州の国立リアウ大学のキャンパスで爆弾を製造していた卒業生3人を反テロ法違反容疑で逮捕するとともに、ほぼ完成して起爆可能な即製爆弾(IED)4個、高性能爆薬、エアーライフルなどを押収した。卒業生らは5月25日に国会で成立したテロ対策を強化した「改正反テロ法」に反発して州議会や首都ジャカルタの国会への爆弾テロを計画していたという。

6月22日にはデンスス88の隊員がジャカルタ西方スバンでカバンに爆弾を隠し持っていた男性を射殺する事件も起きた。警察によるとこの男性はインドネシアのイスラム教テロ組織「ジャマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」のメンバーで、27日の統一地方首長選当日のテロを計画していたとされる。

6月25日にティト・カルナフィアン国家警察長官は27日の投票日にテロを計画していた容疑で13人を逮捕したことを明らかにした。同長官は「事前にテロリストの動きを察知して素早く行動し、未然にテロを防ぐことができた」と述べテロ捜査の成果を強調した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中