スマトラ島の観光地で客船沈没、行方不明者多数 インドネシア、船舶事故が多発する事情とは
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息子の無事を祈る女性 Antara Foto Agency-REUTERS
<インドネシア・スマトラ島の観光地にある湖で客船が沈没、多数の行方不明者が出る事故が発生した。国民の足として船の定員超過が日常的になっているようだ>
インドネシア・スマトラ島の日本人も多く訪れる観光地トバ湖で6月18日夕方、乗客多数を乗せた木造客船が転覆、沈没した。これまでに18人が救助され、1人の死亡が確認されたが、依然多数が行方不明となっている。同客船は乗客名簿もなく、救助された乗客や知り合い・身内が行方不明という訴えなどから約80人の行方がわからなくなっているが、最大で130人が乗船していたとの情報もあり、捜査当局は必死の捜索を続けている。
インドネシアでは客船やフェリーの転覆や沈没事故が多発しており、6月13日にも南スラウェシ州マカッサル沖でモーターボートが沈没、60〜70人が行方不明となっている。
海外に向かう大型客船や長距離移動する船舶を除くフェリー、客船、渡船などはインドネシアでは乗客名簿を作成しないケースが多く、またライフジャケットなどの救助具も完備していないことがある。そしてなにより沈没の原因として最も多いのが「定員超過」で、船の設計上の想定を超える乗客が船体のバランスを悪くし、そこに強風や高波などの悪天候の条件が重なり、転覆、沈没する事故が後を絶たない。
事故船は違法運航の可能性も
6月18日午後5時15分ごろ、トバ湖に浮かぶサモシール島から対岸の港に向かっていた木造客船が転覆、沈没した。駆けつけた別の船舶から撮影された動画には、波立つ湖面を浮き沈みしながら漂流する乗客の姿が映っていた。同客船は乗客名簿がなく、乗船券も不要で当局によると「違法運航」の可能性があるという。
捜索にあたる現地当局は様々な情報を総合して行方不明者は80人から最大で160人の可能性があると発表。事故原因は当時の気象状況と生存者の証言から「定員オーバーに折からの強風、高波で船内に浸水して転覆、沈没した可能性が高い」としている。