最新記事

体制保証

トランプはどうやって体制を保証するのか、金正恩は信じるか

2018年6月12日(火)15時31分
クリスティーナ・メザ

歴史的な米朝首脳会談 会場となるシンガポールの高級リゾートで握手する金とトランプ(6月12日) Jonathan Ernst-REUTERS

<核廃棄の前提となる体制保証は口で言うほど簡単ではない。アメリカは何度も体制保証に失敗しているし、北朝鮮は用心深い。可能性を探った>

アメリカのドナルド・トランプ大統領と、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長がシンガポールで行った会談で話し合った重要問題の一つは、金が核を放棄した後、どうやって体制を維持するかだろう。

トランプはすでに、朝鮮半島の完全な非核化と引き換えに、金の地位を保証すると表明している。しかし、金に対する安全の保証がどんな内容になるのか、北朝鮮国内から反乱が起こった場合はどうするのか、具体的にははっきりしていない。

アメリカは現在、北朝鮮に大使館を置いていない。また、北朝鮮政権は自国の主権を重視しており、近くに米軍が駐留するのを好まないだろう。事実北朝鮮は、隣りの韓国に駐留しているアメリカ軍をも撤退させるか、少なくとも、米韓の合同軍事演習を止めるよう訴えてきた。

一部の専門家たちは、米軍駐留の代わりに、国際平和維持部隊あるいは中国軍が重要な役割を果たせるのではないかと提案している。朝鮮半島を専門とするアナリストたちは、北朝鮮と韓国が4月、共同声明に署名し、平和を目指す意思を再確認しているため、両国の間にある非武装地帯を、緩衝地の機能を果たす平和地帯に変えるべきだと提案している。そこに多国籍軍と国際査察団を駐留させ、双方が攻撃をしかけたりしないようにするわけだ。

極めて用心深い北朝鮮

専門家のなかには、アメリカ政府は北朝鮮政府と不可侵条約を結ぶべきだと主張する者もいる。

支援を通じて北朝鮮市民との関係構築を図るアメリカの非政府組織(NGO)「National Committee on North Korea」のアソシエイツ・ディレクター、ダニエル・ワーツは、本誌に対して以下のように語った。「トランプ政権が口頭または書面で、北朝鮮を攻撃する意思はないと確約すれば、交渉の糸口となるだろう。しかし、北朝鮮はそれだけでは安心しない」

「2005年の6カ国協議で採択された共同声明でアメリカは、『朝鮮半島に核兵器を持ち込まない』ことと、『核兵器や通常兵器を用いて北朝鮮に攻撃を加えたり侵攻したりしない』ことを約束した。しかし、北朝鮮はそれだけでは不十分だとし、交渉を打ち切った。そしてその1年後の2006年10月に、初の核実験を実施するに至った」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    大麻は脳にどのような影響を及ぼすのか...? 高濃度の…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中