米欧の報復関税合戦で中国が得る「漁夫の利」
事態は「予測不可能から大混乱へと転じた」と、国際貿易が専門のドリーン・エデルマン弁護士は指摘する。強硬策は報復の連鎖を招き、貿易戦争に発展しかねない。「滑りやすい危険な坂道に踏み込んでしまった」と、エデルマンは言う。
既にEUは報復関税をかける輸入品として、バーボンウイスキー、たばこ、オートバイなど総額30億ドル余りの候補リストを用意。カナダもトイレットペーパーやボールペンなど、さまざまな日用品の輸入に報復関税をかけると発表。アメリカの関税措置は全く受け入れられない、とトゥルドー首相は表明した。
さらにEUは、中国などで生産された鉄鋼が米関税を避けてヨーロッパに流入する事態を懸念。EU内の産業を保護するために輸入制限する構えだ。保護主義を嫌う国々も、同様に自国本位にならざるを得なくなる。
そうなれば、ただでさえ弱々しい世界貿易の回復に水を差し、景気の先行きも怪しくなる。アメリカは29年の大恐慌後、「高関税措置を試みたが、大失敗だった」と、カンターは言う。
その結果、報復合戦から経済はかえって悪化し、第二次大戦をも招いた。歴史は繰り返すのだろうか。
<本誌2018年6月12日号掲載>
【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>