「拷問したのか?」と元CIA工作員の本誌コラムニストに聞いた
――つまり、ジョージ・W・ブッシュ大統領は何が行われているのかを知っていたということか。
もちろんだ。
――ブッシュ自身が指示を出したのか。その指示は、具体的にはどこから来ていたのか。
重要な質問だ。それについては議論があったが、私は指示が出た現場にはいなかったから、直接的には知らない。
何が起きたのかというと、情報を取るために拘束者に圧力をかけろと言われたCIA幹部は、副大統領に話をしに行き、我々は法的な指導がなければ何もしないと伝えた。副大統領は、それはもちろんだと言って司法省に話を持っていき、何が合法なのかという指導書を書いてほしいと言った。
こうして書かれたのが、「ユー・メモ」(ブッシュ政権の法律顧問ジョン・ユーによるもの)とか「拷問メモ」と呼ばれている有名な文書だ。そこに書かれた本質的な内容とは、「殺しさえしなければ拷問ではない」ということだった。クレイジーだろう? 狂っている。これが、尋問プログラムの指導書になったのだ。
――その指導書は、ブッシュによって承認されたのか。
大統領署名を求めてブッシュの元に回されると、ブッシュは正しい疑問を呈した。つまり、「司法省はこれを承認したのか」と。「イエス」という答えを聞いて、ブッシュは署名をした。
――司法省が承認したのであれば、合法ということになるのか。
この尋問プログラムを擁護する人たちに言わせれば、イエスだ。我々は違法行為を行ったことはない、と。司法省という政府機関は何が合法かを決める場所であり、その司法省がOKだと言えば、我々は法を犯してはいないのだと。
それに対して、私やほかの人たちは「それは違う。明らかにそうではないと書いてある法律がいくつも存在する」と言ってきた。
アメリカ合衆国憲法は残虐で非人道的な扱いを禁じているし、アメリカは何が拷問かを規定している拷問等禁止条約に署名している。ジュネーブ条約を起草して署名しているし、アメリカの軍事司法法典も何が拷問かを規定している。これら全てが、何が合法で何が違法かを制定している。
さらに、大統領が司法省のメモに署名をしたからといって、それが何百年もの歴史をもつ法律を無効にするわけではない。法を制定するのは議会であって、大統領ではない。このメモの擁護者たちは、大統領が承認すれば合法だと言うが、それは間違っている。
何人が水責めを実行し、何人が水責めをされたのか
――「拷問」を命じられるまで、あなたはそれをする訓練を受けたことがあったのか。
いい質問だが、答えはノーだ。CIAには「尋問官」などいなかったし、私の職務である情報分析官と尋問官は全く別の専門だ。
尋問プログラムが始まってから、CIAは尋問を専門としない人たちが連日連夜、尋問をするのはおかしいという至極真っ当なことに気付き、正式な訓練コースを取り入れることになった。そのときには、私はもう尋問プログラムからは離れていたが。
――あなた自身は「水責め」をやったのか。
いいや、私はそうしたことは一切やっていない。私はそれが何かさえ知らなかったから、やりようがない。私が受けた「指令」は、「クリエイティブになれ。そして、拘束者に圧力をかけろ」ということだった。
私はこの指令を、自分の意志でこう解釈した。私は彼に何もしないのだ、と。私は、彼と話をしただけだ。
その拘束者とは、何週間も話をしていた。彼は完全なる潔白ではなかったが、私は彼に好感を持つようになっていった。アメリカとは全く別の世界から来ていたその彼は、根本的には善人だったが、アメリカが容認できないことをした。だが、彼はテロリストではなかった。彼は8年間拘束された後に釈放された。