金正恩氏、再び訪中の噂が
彼は26日のCCTVで、「トランプ政権は、実は準備不足で困っている。なにせ、米朝首脳会談が行われたとしても、会談後に、どのような共同声明を出すのか、まだ何も決まっていないのだから」とコメントしている。「だからトランプは、何か口実を設けて会談時期を延ばしたかったのではないか」とのこと。
となると、27日(and/or 28日)、習近平国家主席に、どのような共同声明にしたらいいかに関しても相談するのかもしれない。
以上はあくまでも教え子たちが知らせてくれた情報に基づく推論であることをお断りしておきたい。
トランプ大統領はこの週末にシンガポールで米朝ハイレベル協議を首脳会談前に開くと言っているので、もしかしたら5月27日と28日の列車は、北朝鮮高官たちのために確保した列車かもしれない。そうであったとしたら、金正恩訪中ではなくなるので、心からお詫びしたい。その場合は、どうかお許し願いたい。
明鏡ラジオ局も
一方、筆者の『毛沢東 日本軍と共謀した男』の中国語版を出版してくれた、ニューヨークに本部がある明鏡出版のラジオ局が5月26日、一枚の北京駅が出した「公告」を基に「金正恩3度目の訪中か、中国東北の列車がまた道を空けている?」という YouTubeを発信している。そこには鉄道路線「北京駅」の「公告」が大きく貼りだされている。このコラムをここまで書いて終わった後に、たったいま発見した。
しかし、もし鉄道局の通告なら、文末の「2018年5月」の個所に日付がないのはおかしいし、また「北京駅」と書くのもおかしい。公式のものなら、ここに書くべき文字は「
北京局集団公司」だ。たとえば「中国鉄路旅客サービスセンター」のような所が知らせを出す。
もし教え子たちが連絡してきた情報源が、この「公告」の噂が広がったものだとすると、信憑性が低くなる。もっとも、秘密裏に動いているので、「中国鉄路旅客サービスセンター」などには載せない可能性がある。今のところ、やはりまだ何とも言えない。
金正恩には宿題が
ただ、これらの噂は別として、少なくとも金正恩委員長にはその前に果たさなければならない宿題があるはずだ。それは自分の言葉で、自分の署名入りで、トランプ大統領に「返信」を書くことだ。今まで一度も自分の言葉で米朝首脳会談を語ったことがないというのは、外交的にはあまりに非礼だろう。それをしなければ、首脳会談開催など、失格だと言っても過言ではない。
(なお、5月25日付のコラム「中国激怒――米朝首脳会談中止」は、あくまでも中国がどのように報道しているかをご紹介しただけで、決して筆者の意見ではないことを、念のために記す。)
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。