トランプ関税はブラジルやインドにはチャンス?...「対米赤字を逆手に」

4月8日、米政権の「相互関税」導入発表を受け、貿易相手国と世界の金融市場は激しい衝撃に見舞われている。写真は3日、シンガポールのタンジョンパガーのターミナルに陸揚げされた自動車(2025年 ロイター/Edgar Su)
米政権の「相互関税」導入発表を受け、貿易相手国と世界の金融市場は激しい衝撃に見舞われている。トランプ大統領の猛攻は続いているものの、南米ブラジルやインドなど、ごく一部は恩恵を受ける可能性のある国として浮上しつつある。ただ、世界は景気後退のリスクに直面しており、恩恵は限定的になる見通しだ。
相互関税措置では、長年同盟関係にある欧州連合(EU)や日本、韓国などは重い関税率を課され打撃は深刻。一方で、ブラジルやインド、トルコ、ケニアは一筋の光明を見出している。
ブラジルの場合、相互関税率は最も低い10%。農業大国だけに追い風となっている。中国が対米報復関税を発動すると表明したことで、ブラジルの好敵手である米国の農産物輸出業者は、対中輸出で従来よりも厳しい条件に置かれるためだ。
トランプ氏の仕掛ける貿易戦争は全世界が対象だが、主要ターゲットは中国など対米貿易収支が黒字の国。このため、ブラジルなど赤字国は相互関税を逆手にとることができる。北アフリカのモロッコやエジプト、トルコ、シンガポールも同様だ。
「米国はエジプトだけに関税を課したわけではない」。こう話すのはエジプト・トルコ合弁企業T&Cガーメンツのマグディ・トルバ会長だ。「米国は他の国々にはるかに高い関税を課した。エジプトの成長に好機が到来した」と意気盛んだ。
トルバ会長は、エジプトの繊維産業の主要な好敵手として中国やバングラデシュ、ベトナムを挙げた。いずれも高い関税対象となった国だ。会長は「チャンスは目の前にある。我々はそれをつかみさえすればよい」と言い切った。
トルコの場合は、以前は鉄鋼とアルミニウムの対米輸出で重い関税を課され痛手を負ったが、今や恩恵を受ける立場にある。他の世界の貿易業者がトルコよりも高い関税にあえいでいるためだ。ボラト貿易相は、他の多くの国に課せられた関税を考慮すると、トルコ製品に対する関税は「一番ましだ」と述べた。