トランプ関税はブラジルやインドにはチャンス?...「対米赤字を逆手に」
マイナス要因も
米国と自由貿易協定(FTA)を結んでいるモロッコも、EUや以前は勢いのあったアジアの主要輸出国と比較すれば有利になる可能性がある。
匿名を条件に語った元政府当局者の1人は「対モロッコ相互関税が比較的低い10%であることを考えると、対米輸出を図る外国資本をモロッコに引き付けるチャンスだ」と述べた。
ただ、マイナス要因も残っており、手放しでは喜べない。例えば中国による最近の対モロッコ大規模投資がトランプ氏の目に留まりかねないためだ。
さらに首都ラバトの独立系シンクタンクのエコノミストによると、自国の航空宇宙産業や肥料産業が打撃を受ける可能性は消えていない。
「米国はモロッコの輸出先として主要な市場ではないため、直接的な影響は限定的と思われるが、関税が引き起こす(世界への)衝撃波や景気後退の影がモロッコの経済成長に影響を及ぼす恐れがある」と語った。
アフリカ東部ケニアの場合、特に繊維メーカーは、関税の影響がより大きい国々の競合相手に対し比較優位を得られることを期待している。ただ、モロッコ同様に相互関税が逆風となる可能性がある。
勝者がいない貿易戦争
恩恵と損害の両面の影響を受けかねないとの見方はシンガポールでも広がっている。
同国株価指数のストレーツ・タイムズ指数(STI)は7日7.5%下落し、2008年以降で最大の下落を記録し、8日も値を下げた。
しかし、シンガポール金融大手オーバーシー・チャイニーズ・バンキング・コーポレーション(OCBC)のエコノミスト、セレナ・リン氏によると、製造業者が分散化を求めて投資資金の一部をシンガポールに振り向ける可能性がある。ただ、シンガポールは製造業規則や現地調達要件が厳しく、その影響は受ける見通しという。