米国との貿易戦争回避に腐心のドイツ 黒字達成はEU内紛呼ぶ両刃の剣
貿易黒字をめぐる対立
だが、その成功がもたらした貿易黒字が、他国との対立の原点となっており、友好国との関係にも影響を及ぼしている。
フランスは何年も前から、財、サービス、そして投資の流れの指標となる経常収支において、ドイツが大幅な黒字を享受していることに不満を漏らしている。その額は昨年、2年連続で世界最大となっている。
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は1月、ドイツなどが巨額の経常黒字を積み上げていることが、他国における保護主義台頭の一因となっている、と指摘した。
フランスは、ドイツが経常黒字を経済的に脆弱な南欧諸国に振り向け、黒字削減に向けて国内投資を増やすことを望んでいる。
IMFと米国も同じような希望を抱いており、投資拡大がドイツの国内需要を刺激し、輸入拡大に寄与することを期待している。
ドイツのショルツ財務相は2日、政府の財政計画を提示。これによると、今年と来年は投資を拡大するが、その後2022年にかけては2017年の水準以下に低下する計画となっている。
ドイツのメルケル首相は先月ワシントンを訪れ、トランプ氏と通商問題を協議したが、解決の兆しはまったく見られなかった。
EU統計局によれば、2017年、ドイツから米国への輸出額は1120億ユーロに達し、EU諸国で2番目に対米輸出額が大きい英国の2倍以上となっている。
「ドイツの問題は、自国の脆弱な戦略的状況に関する現実的な視点が欠けていることだ」と米ジャーマン・マーシャル財団のディレクターを務めるジャン・テカウ氏は語る。
ドイツ政府は、自国の経済政策がもたらす結果についての認識についても不足しており、「長期的には自国の戦略的利益が米国とほぼ重なっている」ことを理解していないと、テカウ氏は指摘した。
(翻訳:エァクレーレン)
[ベルリン 4日 ロイター]
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