最新記事

日本企業

邦銀大手、支店統廃合で前倒し損失 欧米の小規模多店舗化に「1周遅れ」

2018年5月16日(水)14時10分

5月15日、大手行が、リテール支店網の収益化に向けて本格的に動き出した。4月都内で撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

大手行が、リテール支店網の収益化に向けて本格的に動き出した。三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306.T>と三井住友フィナンシャルグループ<8316.T>は2018年3月期決算で、支店網の統廃合にかかる損失を前倒しで計上。今後、高コスト体質のリテール事業を再構築する。

ただ「収入を維持したまま、リストラを進める両面作戦」(大手行役員)には困難も予想される。

店舗統廃合で、コスト削減

 

三菱UFJは18年3月期に支店の統廃合に関連する損失を430億円、三井住友は250億円を計上した。店舗の改編、統廃合で今後発生する損失を前倒しで処理した。三菱UFJは、収益の生んでいない店舗の減損計上にも踏み込んだ。

三菱UFJは今後6年間で銀行支店約510カ店のうち、2割を削減。このうち、従来型は半減させるが、3割は機能を特化させた軽量店舗に置き換える。三井住友は約430カ店のうち、すでに約100店舗を次世代型に移行、残り2年ですべてを衣替えする。

みずほフィナンシャルグループ<8411.T>も100拠点を統廃合すると表明しているが、損失計上は見送った。

三菱UFJの平野信行社長は、リテール業務が赤字ではないとしたものの「このまま放っておけば、赤字になりかねない」と説明。顧客との接点について「リアルの店舗とネットやモバイルを適切に組み合わせる必要がある」と語った。

三菱UFJの来店客数は10年間で4割減少する一方、インターネットバンキングの利用者は5年で4割増えた。店舗の収益性は低下の一途だ。統廃合や小型・軽量店舗への転換により、運営コストを引き下げるのがリテール事業の課題だ。

ネットワークの経済性に潜むわな

ただ、収入を落とさずにリストラを進めるのは、難しいとの指摘も多い。ある大手銀行首脳は「支店を閉じれば、粗利(売上高)も確実に落ちる。しかも、店舗の撤退ができなければ物件費は残るし、人件費もすぐに減らせるわけでもない」と解説する。

銀行支店は、金庫など特有の設備があるため、簡単には次の借り手や買い手が見つからない。下手をすると、コストは大きく下がらないまま、粗利だけが減少していく悪循環に陥りかねない。

もう1つの懸念が、ネットワークの経済性に潜むわなだ。赤字店舗だけをリストラしようとしても、支店網は全体で収益を維持している側面もある。別の大手銀の企画担当者は「ネットワークが薄くなったり、き損すると、黒字店舗の収益も悪化しかねない」と心配もする。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

シンガポール、10月コアインフレ率は前年比2.1%

ビジネス

村田製、営業利益率18%以上・ROIC12%以上目

ビジネス

中国スタートアップ、IPO凍結で投資家の償還請求に

ビジネス

米国債価格が上昇、財務長官にベッセント氏指名で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中