あのネオコン、ボルトン復活に恐怖せよ
国際法という概念にも反対した。「われわれの短期的利益にかなうようにみえても、国際法の正当性をわずかでも認めることは大きな過ちだ。国際法の意義を認める者の長期的な狙いは、アメリカの手足を縛ることにある」と発言したこともある。
国連は国際法に基づいて設置された機構で、安全保障理事会の決議は国際法を遵守するためのものだ。決議の中にはアメリカの安全保障上の利益に資するものもある。それなのに、国連も国際法も否定する人物を国連大使にするのか......?
指名承認手続きの第1段階である上院外交委員会の公聴会で、ボルトンの態度は反発を買った。同委員会の推薦を得られないまま、決定は上院本会議での投票に委ねられたが、否決を恐れたブッシュは上院休会中に議会承認なしで任命。だが休会任命は次の会期末までに承認を得る必要があるため、上院は1年半後にやり直しの機会を得た。
2度目の承認公聴会でのボルトンは不快度がアップしていた。国連大使を1年半務めたことで国連に対する考え方が変化したか、と尋ねられた際には「いや、別に」と言ってのけた。最終的にボルトンは国連大使を辞任し、古巣のシンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所に復帰した。
トランプの邪悪さを刺激
それから約10年後、トランプの大統領選勝利後の政権移行期に、ボルトンは再び国務副長官候補に浮上した。だが国務長官に内定していたティラーソンが懸念を表明し、見送られた。17年2月、マイケル・フリン大統領補佐官が辞任したときも後任候補として名前が挙がったが、結局はマクマスターが選ばれた。
とはいえトランプはボルトンを気に入っていると公言し、近日中に「何らかの形で」政権入りしてもらうつもりだと話していた。それが今、現実になったのだ。
マクマスターは大統領補佐官就任から解任までの1年1カ月、彼の崇拝者らの期待を裏切り続けてきた。現役の陸軍中将でもある彼が評価を得たのは97年に著書『職務怠慢』を発表し、ベトナム戦争当時の米軍上層部は大統領に率直な進言をしなかったと痛烈に批判したときだ。しかし大統領補佐官としての彼は自ら職務を怠り、トランプにこび、その嘘を許容した。
それでも、少なくともマクマスターは国家安全保障を担うNSCに専門職員を集め、彼らの意見に耳を傾けた。一方、ボルトンは専門職員という存在を受け入れそうにない。トランプ政権からの「追放者」は直に、さらに増えるだろう。