凍てつく辺境の地、記者が旅した中国=北朝鮮の国境地帯
記者にとって、最も興味深いのは中国の国境だ。
陸上にある韓国との国境は厳重に要塞化されて相互の往来ができず、せいぜい非武装地帯を隔てて遠望するか、無謀な兵士の脱走を期待するしかない。韓国と北朝鮮の領海を隔てる境界線には多くの軍艦が航行し、厳密に言えばまだ戦時状態にある両国が銃砲撃を交わすこともある。ロシアとの国境は最も距離が短く、まだ分からない点もある。私にとっては、訪れたい場所リストの上位にある。
これに対して、全長1420キロ(880マイル)に及ぶ中国の国境は、実に大きな試練となる。
多くの記者と同様、私もかつて中朝国境地帯を訪れ、あちこちで写真を撮影した。だが今回は、以前から望んでいた手法をとった。国境の南から北までをドライブしたのだ。8日間かけて運転するあいだ、何マイルにもわたって、何もなく、警備兵の姿もない場所が続いた。
誰も何も警備していない状況は、本当の姿を求めている者にとっては、実は素晴らしい記事になる。
隣り合う両国の関係を示す、重要な、しかし単純化された映像が欲しければ、なじみの「ホットスポット」がある。メディア報道でよく目にするのは、国境の両端、丹東・図們(ともん)の市街周辺にある、注意深く監視され、厳重に要塞化された一帯だ。無機質な風景に、中国人観光客の姿が少しばかり彩りを添えている。
その中間には、北朝鮮側ではほとんど暗闇が占め、中国側にも何もなく冷涼な地帯が延々と続く。人っ子一人見かけることのない道を何時間も走るあいだに、明るい小さな国境の町や、ほぼ中断された中朝の特別プロジェクト跡が現れるだけだ。完成半ばの河川ダム、ゴーストタウン化した経済特区、どこにもつながらない橋梁などだ。
国境フェンスの非常に近いところを走っていると、北に進むにつれて、あらゆる種類の監視カメラや、ハイテクを駆使したセンサー付きの恐ろしげな何重もの有刺鉄線のフェンスが、次第に、錆びたワイヤーを使った目の粗い素朴なフェンスへと変わる。それは、ボスニアの村落地帯、人里離れた自治体の境界で目にしたものに似ていた。