凍てつく辺境の地、記者が旅した中国=北朝鮮の国境地帯
ある場所で主要道路を外れて運転していると、完全に役立たずの状態になったフェンスを見かけた。有刺鉄線が曲げられ、ボロ布を巻き付けて、大人でも容易にすり抜けられる。その向こうの川岸には3艘の小舟があり、すぐにでも乗せてくれそうに見えた。もっとも、この季節には水は固く凍っており、歩いて渡ろうと思えば渡ることもできる。
向こう側は、深く、いつまでも続く完全な暗闇だ。その静寂を破るのは、ときおり未舗装の道を走ってくる自転車とそれを追う犬、凍った川からバケツで水をくむ兵士くらいだ。こうした人影は、首都の平壌郊外を旅したときに目にした人々と同じように、単独行動で、荷物の重さに耐えつつ、前方の足元を見つめていた。
凍てついた平原を走り、今にも壊れそうな家屋の並ぶ村落や、小さく薄汚れた工業都市を通過するあいだ、誰かが実際に交流している姿を見ることはめったになかった。2人の女性が喧嘩していたのと、真新しい赤いブーツを履いた3人の可愛らしい少女が、水汲みをしながら遊んでいるのを見かけたくらいだ。
そして、これも北朝鮮側だが、まったく意外で理解に苦しむ場面に遭遇した。臨江市郊外の曲がりくねった道が山地に向かう場所で、腰まで川の水に漬かった人々を見たのだ。恐らく20人ほどの男性グループで、オレンジ色の奇妙なゴムのスーツを着ている。まるで昔の低予算SF映画に出てくるような代物だ。私たちはすぐに車を停め、後部座席から最も焦点距離の長い望遠レンズを取り出した。
地元の人に聞くと、北朝鮮人だという。国境の向こう側では、警備兵が男たちの作業を注意深く監視しているのが見えた。私が夢中になって写真を撮っているあいだ、同僚記者が中国人に、彼らが何をやっているのか尋ねると、砂金を探しているのだと教えてくれた。
その場で確認することは実際不可能だったので、半ば凍りかけた川で何かを探している人たちの写真を撮るだけにとどめ、あとでさらに調査することにした。その後、専門家や文献により、鴨緑江では実際に砂金採取が行われていることが分かった。
すると、砂金を探しているという話は本当だったのかもしれない。北朝鮮の当局者に、金正恩一族のための贅沢品調達を担当しているという「朝鮮労働党39号室」が、砂金採取事業を行っているという推測が正しいかを問い合わせたが、回答は得られなかった。
北朝鮮側には砂金があるのかもしれないが、中国側も非常に明るい照明で輝いていた。臨江を筆頭とするいくつかの街は、どこが一番きらびやかな、あるいは風変わりなライトアップかを、競い合っているようだった。中国が暗い時代を抜け脱して実現した成果を、国境の向こうの人々にしっかり見せたいと願っているかのようだ。