金正恩の心を映す、中国が描く半島非核化シナリオ
南北首脳会談においても、韓国の文在寅大統領は、韓国独自の北朝鮮に対する経済制裁を解除して、南北経済交流を促進させていくことだろう。
実は、4月23日にコラム<中国、北朝鮮を「中国式改革開放」へ誘導――「核凍結」の裏で>をアップした後に、中国外交部の報道官が「中国は、北朝鮮の経済発展の最大の後ろ盾になる」と言った情報を得た。追記で書こうかと思ったが、また書くチャンスもあるだろうと、その時は控えた。
中国のこの考え方は、おそらく金正恩とほぼ一致しており、それはまた実は韓国の文在寅大統領の考え方とも類似のものと考えられる。文在寅は日米よりも中朝の方を向いている。
その中朝、あれだけ6年間も首脳会談も行わないほど敵対してきた両国が、急激に接近したのは昨年末からのトランプ政権の対中強硬策への転換が影響しているのは確かだろうが、それ以上に4月12日のコラム<北朝鮮、中朝共同戦線で戦う――「紅い団結」が必要なのは誰か?>に書いたように社会主義国家の中で市場経済を推進する「特色ある社会主義思想」が一党支配を続けることへの正当性を習近平政権はより堅固にしたいものと考えられる。
金正恩自身が「中朝共同戦線で戦う」と言ったのだから、中国のシナリオは金正恩の心を映しているものと考えていいだろう。
南北首脳会談では
本日は南北首脳会談が開催される。
南北の朝鮮民族による政権は、最終的には4月3日のコラム<一国二制度「連邦制統一国家」朝鮮?――半島問題は朝鮮民族が解決する>に書いたような国家像を描いているかもしれない。
しかし、それはかなり先のことになり、当面は経済建設が優先され、朝鮮半島の非核化は、おおむねここに書いた中国のシナリオに沿って進んでいくだろうと思われる。
本日の南北首脳会談終了後に発表されるだろう南北共同宣言で、限られた表現の中での金正恩の意思表示を窺うことはできるだろうが、その心は、環球時報の社説が解説した内容に最も近いにちがいない。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。