最新記事

朝鮮半島

金正恩の心を映す、中国が描く半島非核化シナリオ

2018年4月27日(金)13時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

4.国際社会は制裁を部分的に取り消し、部分的に普通の交流を回復する方法で、北朝鮮が安定的な行動をするように促していかなければならない。そうすれば平壌は国際社会に復帰することがもたらす巨大な利益に気が付くだろう。そしてその利益こそが逆に国家の安全を実現させることに気づき、徐々に核兵器を削減していくことこそが北朝鮮の安全を保障してくれるのだということを実感するだろう。

5.北朝鮮は核兵器の研究開発に巨大な犠牲を払ってきた。それを容易に放棄することはないだろう。しかし核兵器を放棄する方が、核兵器を保有する事よりも、比較にならないほど国家的利益をもたらすと実感した時に、北朝鮮は初めて「核放棄」を真に実行に移すだろう。

6.核兵器は大国が持つ威嚇力(他国への抑制力)の基盤になってはいるが、しかし大国(核保有国)は決してそれを戦略的賭博の日常手段として使ったりはしない。もし米韓が北朝鮮の安全保障に対して、正当性のない圧力をかけることさえしなければ、北朝鮮には核兵器を持つ意味(必要性)はないのである。

7.国際社会がすべきことは、核兵器が北朝鮮にとって「不必要なものだ」と実感させることである。経済発展が加速し、北朝鮮が、核兵器は「国家の貴重な宝物」から「国家の負担」になると感じたときにこそ、真に核兵器を放棄するときが来るのである。

8.そうすれば、北朝鮮はやがて自国が敵視されていないことに気が付き、現政権が転覆されるというような危機感を感じないようになるだろう。

9.これまで北朝鮮と米韓は、どちらがより強力な軍事力を持っているかを競いあってきたが、これは決して完全に北朝鮮が自ら創り出したものとは言えない。米韓軍事同盟(とその軍事演習)の方に、北朝鮮より遥かに大きな責任がある。今後は北朝鮮を東北アジアの経済発展の競争の中に巻き込むよう推進していかなければならない。事実、北朝鮮はそれを望んでいるのだが、自国一人でその大転換を図ることはできない。ある意味、北朝鮮は核兵器を、自国が最終的に向かう平和と繁栄の道への踏み台(ジャンプ台)とみなしているということができる。

10.少なからぬ人が、アメリカは東北アジアに平和が訪れることを望んでいないのではないかと疑っている。アメリカにとっては(戦争の危機を煽るような)緊張状態がある方が国益に適うのだろうと思っている(筆者注:軍需産業のことを指している)。本当にそうだとすれば、話は別だ。

以上が社説の内容である。

経済発展の後ろ盾は中国が

環球時報の社説が出ると同時に、中国外交部の報道官は、「中国は、北朝鮮の経済発展の最大の後ろ盾になる」と明言した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

マスク氏のニューラリンク、脳インプラントの実現可能

ワールド

米中の動向、引き続き高い関心持ち注視=トランプ氏の

ビジネス

企業向けサービス価格10月は2.9%増、指数は95

ビジネス

午前の日経平均は反落、トランプ氏の関税方針を嫌気 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 4
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    テイラー・スウィフトの脚は、なぜあんなに光ってい…
  • 7
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 8
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 9
    日本株は次の「起爆剤」8兆円の行方に関心...エヌビ…
  • 10
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中