EV時代到来、素材の覇権をかけ鉄とアルミが激突
テスラからコメントは得られなかったが、同社が米証券取引委員会に先月提出した書類によれば、「モデル3」の設計について、「軽量かつ安全である一方で、大衆車としてコスト効率を改善するために、複数の素材をミックスしている」と説明している。
アルミニウムではなく鉄鋼を選択した他の大衆市場向けEVとしては、世界で最も販売台数の多い日産自動車<7201.T>のEV「リーフ」、それにフォルクスワーゲンの「eゴルフ」がある。
「eゴルフ」はアルミニウムを129キロ、「リーフ」も171キロ使っているのに対し、テスラの高級車「モデルS」は661キロ使用している、とA2Mac1オートモーティブ・ベンチマーキングは指摘する。テスラ「モデル3」については詳細な比率は分からなかった。
画期的な変化
とはいえ、「EV革命」によりアルミニウム産業が強い追い風を享受するという見込みに変化はない。特にハイブリッド車の場合、2つのエンジンを必要とするだけに恩恵は大きい。
内燃式ガソリンエンジン部分とトランスミッションは通常どちらもアルミニウムで作られており、EVにおけるバッテリーの格納容器とモーターにもアルミが使われることが多いと、独アルマグの自動車用金属専門家は語る。
また、一つには充電ステーション網が未整備であるため、純粋なEVが幅広く普及するまでにはまだ何年かかかると見込まれることから、その間は、ハイブリッド車の成長がアルミニウム産業に恩恵をもたらすと期待されている。
CRUコンサルティングのエオイン・ディンズモア氏は、EV・ハイブリッド車によるアルミニウム需要は、2030年までに10倍に膨らみ、1000万トン近くに達すると予想する。
ロンドン名物の黒塗りタクシーにも昨年初めてEVが導入されたが、これにもアルミニウムが用いられており、ノルウェーのアルミニウム製造企業ノルスク・ハイドロが英ウェールズに保有するアルミニウム製造工場の操業再開につながった。