EV時代到来、素材の覇権をかけ鉄とアルミが激突
バッテリーの性能改善
だが、アルミニウムが鉄鋼よりも高価であることに変わりはない。
自動車に使用されるアルミニウムと鉄鋼の価格差はかつてほど大きくはないが、鉄鋼使用によるコスト削減効果は依然かなり大きいと業界専門家は言う。
一方、EV用バッテリーの高性能化や低価格化、動力源装置と全体的な構造設計の発達により、航続距離を延ばすための軽量化を狙ってアルミを使う必要性は低下してきた。
アルマグによれば、2010年以降、バッテリーのコストは1キロワット時あたり1000ドルから同114ドルまで下落し、今後数年でさらに安くなると予想されている。
「自動車メーカーは、バッテリー価格が低下するなかで、全面的に鉄鋼を採用しても航続距離の要件を満たせるという結論に達しつつあると思う」と、世界鉄鋼協会の自動車用鋼板部会のテクニカルディレクターを務めるジョージ・コーツ氏は述べている。
自動車の中で動力を生み出す主要装置であるパワートレインの改善も、大きな影響を与えている。
日産「リーフ」2017年モデルの航続距離は、2011年モデルに比べ50%近く伸び、172キロに達した。マッキンゼーのエリケス氏によれば、これは主としてパワートレインの改善によるもので、4つの独立したシステムを1つに統合したことが功を奏したという。
素材のミックス
同時に、鉄鋼産業では高性能の高強度鋼材(AHSS)製品を開発してきた。通常の鉄鋼よりも強く、軽く、そして何よりも重要なことに、アルミニウムより低価格だ。
「独ティッセンクルップやアルセロール・ ミタルといった(鉄鋼)企業には、おとなしく市場シェアを譲る気はない。素材をめぐる戦いが起きるだろう」と独アルマグのパートナーであるヨースト・ゲートナー氏は語る。
今後のモデルは、さまざまなグレードの鉄鋼、アルミニウム、カーボンファイバー、マグネシウム、プラスチックなど、複雑な素材構成になる可能性が高い、と自動車メーカー各社やコンサルタントは予想する。
BMWは「i3」「i8」といったモデルで高価なアルミニウムやカーボンファイバーをふんだんに使っているが、将来のEVモデルでこれらの素材の使用を増やすことは計画していないとロイターに語った。
「(将来のEVに関しては)『すべてを1種類の素材で』というソリューションはない」と同社はメールで回答。「今後も、素材それぞれの固有の長所が活かせるような方法・分量で使っていくつもりだ」
(翻訳:エァクレーレン)
[ロンドン 27日 ロイター]
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