米朝首脳会談前に拘束されたアメリカ人は解放されるか──帰らなければ会談中止の声も
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平壌での記者会見で容疑を認めるキム・ドンチョル(2016年3月) KCNA-REUTERS
<解放に向けて努力しているとトランプは言うが、米国市民の命の問題なのに非核化と比べて関心が低いという不満も聞こえる>
北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との、初の米朝首脳会談を控えたドナルド・トランプ米大統領は4月18日、日本の安倍晋三首相との共同会見の中で、現在北朝鮮に拘束されている3人のアメリカ人について言及し、アメリカが解放のために北朝鮮と協議していることを明らかにした。
「3人のアメリカ市民を取り戻すための努力を続けている。米朝は非常に良好な対話を続けているので、実現する可能性は高いと思う」と、トランプは語った。
(3人が、ワームビアのような昏睡状態でなく無事に解放される保証がないなら、北朝鮮との対話などありえない)Under no condition should POTUS negotiate #denuclearization with #NorthKorea without assurance the 3 Americans freed aren't in the same condition as Otto Warmbier. #kimjongun #tcot #MAGA pic.twitter.com/OHTOCrFTfA
— Summer Hawkes (@SummerAnnHawkes) 2018年4月19日
拘束中の3人の姿が最後に確認されたのは、昨年6月に米国務省のジョセフ・ユン北朝鮮特別代表が北朝鮮を訪問し、拘束中のバージニア大学の学生オットー・ワームビアが解放された時だ。ワームビアは昏睡状態で帰国したが、その後死亡した。
(北朝鮮と和平を結びたいのはわかる。だが金正恩は、彼がオットー・ワームビアにしたことの罪を償わなければならない)I can understand wanting to have peace with #NorthKorea ,
— David Thorpe (@DavidThorpe1237) 2018年4月18日
but Kim Jong-un should face justice for what he did to Otto Warmbier#Justice pic.twitter.com/jRU6D31mMT
3人のうち1人は、韓国系アメリカ人のキム・ドンチョルで、2015年にスパイ容疑で逮捕され、10年の拘禁刑を言い渡された。中国と北朝鮮の国境地帯にある経済特区で活動していたとされている。
その他の2人は、いずれもピョンヤン科学技術大学で教授職にあったトニー・キムとキム・ハクソンで、2017年5月に身柄を拘束されたが、その理由は明らかになっていない。キム・ハクソンは90年代に中国から渡米して米国籍を取得したと、ニューヨーク・タイムズは報じている。
「非核化」とどちらが優先か
国務省の報道官は本誌の取材に対し、「アメリカ市民の安全、身柄の保障は最優先事項の1つ。外交交渉の機密事項についてコメントはできない」と話している。「確かなのは、米朝首脳会談の準備のために米朝両国が直接対話を行い、北朝鮮が非核化について協議する意思を示したことだ」
だが、3人の解放は「非核化」に比べるとさほど重要視されていない、と専門家は言う。
「トランプ政権が拘束中の3人について全体の交渉の中でどのように位置付けているか、根本的な疑問がある」と、米シンクタンク「ウッドロー・ウィルソン国際研究センター」アジアプログラム部長のアブラハム・デンマークは言う。「3人が解放されなければ、北朝鮮との交渉は続けられない」