世界が習近平の中国をあきらめる時
「世界が中国に合わせよ」
中国が世界に合わせるのではなく、世界が中国に合わせるべきだと、習は考えている。北朝鮮の核開発をめぐる疑惑にもかかわらず、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を権力の座から引きずり降ろすことには関心を示さない。その一方で、アメリカが3月8日に発表した鉄鋼・アルミニウムの輸入制限のような保護貿易政策には「目には目を」の報復措置で応じる可能性が高い。
10年の逡巡の末、中国はついに痛みを伴うが避けて通れない経済改革に乗り出している。改革遂行のために習にはもっと時間と権限が必要だと、彼の支持者の一部は考えている。公的債務の削減には時間がかかり、経済成長の鈍化につながりかねない。習は恐らくそのことを承知しているだろう。ひょっとしたら自らそのプロセスを管理したいのかもしれない......。というのが任期撤廃の発表をめぐる最も楽観的な見方だ。
経済が軌道に乗って債務も減れば、習は後継者を指名して権力を移譲し、英雄として歴史に名を刻む可能性もある。あり得ないシナリオではない。ただしそれは、習がそうした持続的かつ痛みを伴う経済的移行も辞さないとすれば、そして、いずれは権力を手放すと仮定すれば、の話だ。
中国の発表を受けて欧米の専門家の間には幻滅が広がっている。中国が(80年代の韓国と台湾のように)経済が繁栄するにつれて政治改革を進めると期待していた人々はなおさらだ。
彼らはようやく現実を受け入れているようだ。中国は習の下で自信を増し、これまで以上に抑圧的な独裁国家になっている。反政府派に対する取り締まり強化と、インターネット検閲とテクノロジーを利用して政権が問題視する市民を監視するやり方が定着。今後さらに広がる可能性もある。
中国は経済的には成功しているにもかかわらず、いまだに多くの市民が政治的自由の拡大を求めている。しかし習体制の下では彼らには発言権がない――どうやら、これから先も当分なさそうだ。現在64歳の習は見るからに健康そうで、去りゆく者の気配は感じられない。
中国の「皇帝」の座は死ぬまで安泰と思ってまず間違いないだろう。
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