最新記事

銃規制

今回は違う! 銃社会アメリカを拒絶する賢い高校生たち

2018年3月15日(木)17時05分
ライアン・シット

授業をボイコットして米国会議事堂にデモをかける高校生たち(3月14日) Joshua Roberts-REUTERS

<フロリダ州の高校での乱射事件から1カ月。生き残って銃規制を求める高校生に全米3000以上の高校など計18万人が呼応した。今回はなぜ違うのか>

銃規制をめぐっては、アメリカは果てしなく同じパターンを繰り返してきた。

痛ましい惨劇が起きるたびに犠牲者の死を悼み、怒りの声を上げ、銃社会の現状を見つめ直す。だが議論が盛り上がるのは一時期だけで、連邦法の成立には至らず、事件が忘れられた頃にまたもや悲劇が繰り返される。

しかし、今回は様子が違う。2月14日にフロリダ州パークランドのマージョリー・ストーンマン・ダグラス高校で起きた銃乱射事件(死者17人、負傷者14人)は、現状を変えるきっかけになるかもしれない(■「銃社会アメリカが変わり始めた」)。

銃乱射を生き残った生徒たちは、全米からの注目をチャンスととらえ、すぐさま議会に銃規制強化を訴えるなどの行動を開始した。呼び掛けに応え、全米の若者たちが#EnoughIsEnough(もう沢山だ)、#NeverAgain(二度と繰り返すな)などのハッシュタグを付けてソーシャルメディアでメッセージを発信、連動して銃規制キャンペーンを展開し始めた。

「今回は違う」と、銃規制団体ギフォーズのイザベル・ジェームズ政治部長は3月14日、本誌に語った。

「生徒たちの訴えを受けて、全米の大人たちも子供の安全を守らなければと、真剣に考え始めた。これはニュータウン以来のことだ」ニュータウンとは、2012年12月14日にコネティカット州ニュータウンのサンディーフック小学校で起きた銃乱射事件のことだ(小学生20人、教職員6人が死亡)。

多過ぎる子供の犠牲者

今回の抗議がこれまでと違うのは、生徒たちがまさしく「もう沢山だ!」と感じている世代であることだと、ジェームズは言う。「彼らは学校で銃乱射事件が頻発する時代に育ち、学校で銃撃対応の訓練も受けてきた世代だ」 それだけ脅威が身近だったわけだ。

ストーンマン・ダグラス高校の生徒の場合はその上、比較的裕福な地域の学校だけの特権になってしまった特殊な「課外教育」を受けていた。そのおかげで、乱射事件直後から銃規制を呼び掛け、効果的に組織化できたのだ(■関連記事「運動を率いる高校生は課外授業が育てた」)。

事件と高校生の行動をきっかけに、アメリカの世論は銃規制に大きく傾いた。CNNは事件の1週間後、対話集会を主催。フロリダ州選出のマルコ・ルビオ上院議員(共和党)、テッド・ドイッチュ下院議員(民主党)、NRA(全米ライフル協会)の広報担当ダナ・ローズチと並んで、ストーンマン・ダグラス高校の生徒たちも壇上で意見を述べた。

同じ日、ドナルド・トランプ米大統領もホワイトハウスに遺族や生徒たちを招き、話を聞いた。

事件から2週間を経て、ストーンマン・ダグラス高校で完全に授業が再開された日には、ベッツィー・デボス教育長官も同校を訪れ、生徒たちの訴えに耳を傾けた。

事件から1カ月に当たる3月14日を前に、13日には市民団体アバーズが連邦議会議事堂前の芝生に7000足の靴を並べた。これらの靴はサンディーフック小学校事件以降に銃撃で死亡した未成年者の数を表す。


CNNによると、7000人という数字の根拠は米疾病対策センター(CDC)のデータ。アメリカでは毎年1300人近い未成年者が銃撃で殺されるという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プラスチック条約、最後の政府間議始まる 米の姿勢変

ビジネス

米財務長官指名のベッセント氏、減税と関税が優先事項

ワールド

新たな貿易戦争なら欧米双方に打撃、独連銀総裁が米関

ワールド

スペイン・バルセロナで再び抗議デモ、家賃引き下げと
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中