最新記事

スキャンダル

3分で分かる 森友文書改ざんの問題点と今後の展望

2018年3月15日(木)17時30分

3月12日、大阪市の学校法人「森友学園」に対する国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題が12日明らかとなったことで、安倍晋三首相は再び窮地に立たされている。写真中央は会見する麻生財務相。都内で撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

大阪市の学校法人「森友学園」に対する国有地売却を巡る財務省の決裁文書改ざん問題が12日明らかとなったことで、安倍晋三首相は再び窮地に立たされている。

財務省が参院予算委員会などに同日提示した調査報告によると、同学園が設立する予定だった小学校の名誉校長を務めていたことのある安倍昭恵首相夫人に関する記述が削除されていたことも明らかになり、隠ぺい疑惑が浮上している。

2016年に行われた森友学園に対する大阪府豊中市の国有地売却が破格の価格で行われていたことが昨年発覚。これに対し、当局者は土地の地中ごみの撤去費用を含んでいるためだと説明。発覚以降、安倍首相には疑惑がつきまとっていた。

同学園への国有地売却を巡り、安倍首相は自身や夫人が便宜を図ったことはないと、一切の関与を否定しており、そのような証拠が見つかった場合には辞任すると明言している。

いったん終息したかに見えた森友問題だが、決裁文書が書き換えられていたと日本のメディアが報道して以来、スキャンダルが再燃した。財務省の調査報告によると、「貸付決議書」「売払決議書」「特例承認の決裁文書」など計14件で書き換えが見つかった。

●「書き換え」はなぜ問題か

ロイターが見た書き換え前と書き換え後の文書には、安倍首相と夫人のどちらも国有地売却に直接関与したことを示す「スモーキングガン(決定的な証拠)」はないように見える。

書き換えには、昭恵夫人の同学園訪問や、安倍首相と麻生財務相の保守系団体「日本会議」とのつながりに関する言及の削除も含まれている。これらはよく知られた事実である。

「いい土地ですから、前に進めてください」と、昭恵夫人が森友学園前理事長の籠池泰典被告に語ったとする同被告のコメントも削除された。

麻生財務相は12日、同省当局者が書き換えを行ったのは、当時、理財局長だった佐川宣寿・前国税庁長官の国会答弁との整合性を取るためだったと説明。同氏は先週、突然国税庁長官を辞任した。

だが、書き換えの事実が隠ぺい疑惑をかき立てることは避けられず、隠ぺいとなれば、土地売却そのものよりも安倍氏と麻生氏にとってより大きな打撃となる可能性がある。

安倍首相が実際に関与したとする証拠が浮上したり、そこそこ高い支持率が急落したりと、この問題がこれ以上悪化するのであれば、時期尚早ではあるが、辞任の可能性も出てくる。

●麻生財務相はどうなるか

麻生財務相は12日、辞任しない意向を示したが、少なくとも監督責任を問われ、辞任を求める圧力は高まるだろう。

安倍首相は副首相を兼任する麻生財務相を引き止めようとするとみられるが、公的文書の書き換えを巡って当局者が逮捕されることになれば、麻生氏の立場は悪くなり、財務相のポストにとどまることは難しくなる。

すでに世論の怒りは高まっている。前週末に産経新聞が実施した世論調査によると、71%が麻生財務相は辞任すべきと答えている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

利上げ2%・狭い長短金利差なら、27年度以降一時赤

ワールド

インド洋大津波から20年、被災した各国で追悼式

ビジネス

中国GDP、23年は17.73兆ドルに上方修正 2

ワールド

韓国野党、大統領代行の首相への弾劾訴追案 27日採
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 3
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシアの都市カザンを自爆攻撃
  • 4
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 5
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命を…
  • 6
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 7
    「とても残念」な日本...クリスマスツリーに「星」を…
  • 8
    韓国Z世代の人気ラッパー、イ・ヨンジが語った「Small …
  • 9
    日本企業の国内軽視が招いた1人当たりGDPの凋落
  • 10
    ウクライナ特殊作戦による「ロシア軍幹部の暗殺」に…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 6
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 7
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 8
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 9
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 7
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 8
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 9
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 10
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中