全米で人手不足から賃金上昇 州データに読み取る「転換点」
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2月5日、米労働者が長年待ち望んでいた賃金上昇が、全米の広範囲に広がっていることが、ロイターが各州データを分析した結果、明らかになった。カリフォルニア州で2013年9月撮影(2018年 ロイター/Mike Blake)
米労働者が長年待ち望んでいた賃金上昇が、全米の広範囲に広がっていることが、ロイターが各州データを分析した結果、明らかになった。失業率低下がようやく賃金を押し上げ始めていることを示している。
昨年は、全米で少なくとも半数の州において平均賃金が前年を大きく上回る3%超上昇した。金融危機による歴史的なリセッション(景気後退)の10年を経て、失業率が記録的低水準に迫った州の数も急増した。
州レベルで集計されたデータは、国家統計からは見えてこない転換点を示唆している可能性がある。
過去4年にわたり、米国経済は新たに1000万人の雇用を生み出し、完全失業率は2000年以降で最低水準にまで低下している。だが、賃金の上昇は見られなかった。
とりわけトランプ大統領の就任初年、企業は恩恵を受け、株式市場が上昇したにもかかわらず、こうしたズレは、米連邦準備理事会(FRB)の専門家を悩ませ、格差拡大を懸念する政治家をいら立たせ、一般的な米国民の足かせになってきた。
トランプ大統領は、自身が推進する法人税減税を柱とする税制改革が企業マインドを高めていると強調する。また、先月30日に議会で行った一般教書演説では、米国民は長年にわたる不況を経て、ようやく賃金上昇を目にしていると語った。
確かに、1月の時間当たり平均賃金は前年比+2.9%で、約8年半で最大の上昇率となった。とはいえ、エコノミストが健全な経済の兆候とする3.5─4%の上昇率には至っていない。
ロイターによる分析と全米各地の企業への取材から、賃金上昇は製造業からテクノロジー、小売業に至るまでさまざまな業種で起きていることが明らかとなった。だが、どの程度トランプ大統領の功績としていいのかについては、企業経営者の反応はまちまちだった。リセッション(2007─09年)のピーク時に10%を記録した失業率は、ここ数年の雇用成長で6ポイント近く低下した。
「この会社にいる誰もが、ここを辞めてもっと稼ぐことができると分かっている」と、ニューヨーク州で中古車ディーラーにソフトウエアを販売するフレイザー・コンピューティングのマイケル・フレイザー社長は語る。対策として、同社は昨年末に6.1%の賃上げを行ったという。前年は3.7%の賃上げだった。
オレゴン州ポートランドのソフトウエア企業「Zapproved」は、プログラミングの学校を卒業したばかりの人たちを雇い、最大3カ月の研修を行っているという。これまで雇っていたソフトウエア開発経験者の賃金が高くなり過ぎたためだ。それでも同社では、「賃金相場に遅れを取らないようにする」ため、年2回の昇給を実施していると、モニカ・エナンド最高経営責任者(CEO)は話す。