「機密メモ」の公表は、ロシア疑惑に対するトランプの大きな一勝
上院情報特別委員会のヌネス委員長は、トランプ政権移行チームの幹部を務めたことでも知られるトランプびいきだ Jonathan Ernst-REUTERS
<予想通り中身のない文書だったが、国民に情報機関への疑念と民主主義の未来への不安の種をまくことに成功した>
米下院情報特別委員会のデビン・ヌネス委員長(共和党)がまとめた極秘文書、いわゆる「ヌネス・メモ」が2日、公開されたが、大方の予想通り中身のないものだった。
司法省はメモの公開に強く反対し、同省やFBIに事前チェックの機会を与えないままでの公開は「無責任きわまりない」と警告した。だが公開にあたり、ホワイトハウスのドン・マクガーン法律顧問はそうした主張に反応すらしなかった。
FBIも司法省と同様に、メモの正確性に対する「重大な懸念」を表明。にもかかわらず、マクガーン法律顧問はメモの機密扱いを解く理由について、トランプ大統領がこの「データ」を検討し、トランプ陣営に偏見を持ったFBIや司法省の関係者が違法に内情を探ろうとした証拠として、未編集のまま公開することを選択した、と述べた。
メモは主に、FBIが外国情報監視法(FISA)に基づき、大統領選挙中のトランプ陣営で外交顧問を務めたカーター・ページに対する監視の令状を取るにあたり、「データと適切な情報」を提示しなかったと主張。メモでは約1年間にわたってページが監視対象だったことが示されている。ナショナル・レビュー誌のデービッド・フレンチ上級ライターが指摘するように、トランプ陣営への対スパイ活動捜査が2016年つまり「ページに対するFISAの令状の請求前に」始まっていたことも明らかになった。
捜査の根拠の真偽は問わず
ヌネス・メモでは、令状が3度にわたり更新されたことにも触れられている。更新にあたっては本来、監視対象が外国勢力のために秘密の情報活動に従事したという当初の容疑を裏付ける情報が得られたかどうかを判事が判断しなければならない。また、MI6(英国情報部国外部門)元職員のクリストファー・スティールがまとめたトランプ陣営とロシアの関係を記したいわゆる「スティール文書」をメディアにリークしたとして、関係者を非難。ただし同文書の内容を明確に否定することはなく、同文書の提供者たちは偏向しており、令状請求の根拠には値しないと主張するに留まっている。
鳴り物入りで公表されたが、何かを証明するわけでもないこのメモには、いったいどんな意味があるのというのだろう。