第2次朝鮮戦争後の東アジアで何が起こる?
また、おそらく北朝鮮崩壊後も不安定な状況は続くだろうから、米軍の高いプレゼンスはしばらく維持される可能性が高い。それが展開される場所は、朝鮮半島周辺だけでなくアジア太平洋全域に及び、この地域に積極的に進出してきた中国を不安に陥れる。
その中国では、習近平(シー・チンピン)国家主席による権力集中が進んでいる。これは迅速な意思決定を可能にする一方で、習は国内の混乱は何としてでも防がなければならないという思いと、世界の舞台で弱腰だと思われてはならないという意地を強めるだろう。
「統一朝鮮」の将来性
それだけに北朝鮮崩壊後の混乱は、習にとっても中国共産党にとっても、天安門事件以来の大きな難題になる。目先の懸念は、北朝鮮難民が数百万人規模で中国に流入して、中国東北部の社会や経済を著しく不安定化させることだ。
この問題は中国とアメリカ、そして新たに統一された朝鮮半島(以下「統一朝鮮」と呼ぶ)との関係を悪化させるだろう。中国指導部が、「そもそも朝鮮半島危機は、トランプ政権の強硬な政策がきっかけだ」と判断したら、米中間の緊張は一段と悪化する。
当面の間、中国指導部は難民問題など北朝鮮崩壊後の混乱への対応に追われるだろうが、それが一段落したら、これまで以上に強気な態度を示すようになるだろう。それは台湾との関係にも影響を与えるはずだ。
かねてから習指導下の中国は、台湾に対する態度を硬化させてきた。習は17年秋の第19回中国共産党大会で、台湾独立に断固反対すると明言。自らが主張してきた「中華民族の偉大な復興」にとって、台湾統一は不可欠であるとの考えをにじませた。
北朝鮮の金体制が崩壊して、韓国に合流する形で朝鮮半島が統一されれば、人口約7500万人の国が誕生する。数十年もたてば、統一朝鮮は戦争の荒廃から立ち直り、現在の韓国よりはるかに大きな経済基盤と国際的な競争力を持つだろう。
当然参考になるのは、91年の東西ドイツ統一だ。統一により経済基盤も政治的影響力も大きくなったドイツは、EUのリーダーに成長し、ヨーロッパという共同体の経済的・政治的バランスを根本から変えた。
統一朝鮮が同じような成長を遂げれば、中国との間で緊張が高まるのは間違いない。中国は北朝鮮の一部の歴史的領有権を主張したり、統一朝鮮における駐留米軍の地位や国境線の引き方など、地政学的な要素を問題視するかもしれない。
日中関係は一段と悪化
統一朝鮮は、日米関係も韓国時代とは違うものにするだろう。北朝鮮という脅威が消えた以上、アメリカと同盟関係を維持する大きな目的の1つが失われる。冷戦後のNATO(北大西洋条約機構)が経験したのとよく似た状況だ。
北朝鮮の脅威に対抗するために生まれた韓国と日本の協力関係も、統一朝鮮下では消滅するだろう。朝鮮人(韓国人)は伝統的に愛国主義的意識が強く、歴史的な敵である日本に対して、より強硬な外交政策を取るようになる。