第2次朝鮮戦争後の東アジアで何が起こる?
中国と台湾の間でいざこざが起きたとき、統一朝鮮は駐留米軍が台湾海峡に派遣されることを嫌がるだろう。これは中国にとっては好ましいことであり、統一朝鮮との国境防衛に神経をとがらせずに、中国軍を台湾方面に動かすことができる。
第2次朝鮮戦争が起きれば、日本の地政学的環境は大きく変わるだろう。短期的には、日本経済が受ける打撃は大きい。金政権はほぼ確実に日本にもミサイルを発射するだろうし、年間7兆円超の日韓貿易は壊滅的な打撃を受けることになる。
しかし、北朝鮮の脅威がなくなれば、これまでその対策に向けられていたリソースを他に向けることができるため、長期的には日本の外交政策はより積極的になるだろう。統一朝鮮は、おそらく中国とアメリカ両方と良好な関係を維持しようとするだろうが、日本は中国と統一朝鮮に対する自衛のため、アメリカとの同盟強化を図るだろう。
しかも日本と中国は長年、インド・太平洋地域における経済的・外交的影響力拡大をめぐり、静かな競争の火花を散らしてきた。それは朝鮮有事後に一段と悪化するはずだ。
台湾は唯一、第2次朝鮮戦争を(物理的に)無傷で乗り切る可能性が高い。統一朝鮮も日本も、東アジアで覇権を築こうとする中国に対抗するため、台湾と非公式の関係拡大に努めるだろう。台湾はこうした国際的な承認拡大を歓迎するはずだ。
また、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が唱える「新南向政策」に倣い、台湾では東南アジアとの経済連携を強化して、経済的な中国依存から脱却しようとする動きが加速するだろう。そのいずれも中国にとっては面白くない話であり、中台関係は大幅に悪化する可能性が高い。
最近のアメリカは、目先の朝鮮半島の危機管理方法(北朝鮮の封じ込めか戦争)にばかり目を向け、戦後の中長期的シナリオや、それが東アジア諸国とアメリカの関係にどのような影響を与えるかは、ほとんど検討していないようだ。
トランプ政権は、今すぐこうしたシナリオの検討を始めるべきだ。さもないと、アメリカはこれまで北朝鮮に対して取ってきた瀬戸際政策を、中国に対して取ることになりかねない。
<本誌2018年2月16日号掲載>
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From thediplomat.com