セックスドールに中国男性は夢中
一方、「男性の権利」の擁護を掲げる活動家たちはネット上で、セックスドールの使用が広まれば、男たちはこれまでのように女に振り回されないで生きていけると主張している。セックスドールの普及はレイプなどの性犯罪を抑え、人身売買を減らす効果もあるはずだと論じる人もいる。
実際、人身売買の状況は深刻だ。米国務省は17年に、中国を世界の人身売買市場で最悪の国の1つと非難した。近隣諸国から中国に売られてきた女性の数は不明だが、農村部の嫁不足は深刻だから増えていることは確かだ。11~15年にベトナムで人身売買の被害に遭った女性は少なくとも4500人とされるが、そのうち70%は中国に売られており、相場は1人当たり1万8500ドルだという。
セックスドールが人身売買を減らすという主張は外国にもある。人形の使用が増えているのも中国だけではない。スペインには人形専科の売春施設がオープンしている。
例えば日本のような国だったら、セックスドールに群がるだけで変態扱いされるかもしれないが、中国の江西省の場合は切羽詰まった事態への応急措置といえるかもしれない。人口の男女比が大きく崩れ、女性100人に対して男性が138人になっているからだ(世界平均では105人)。
一方で暴力犯罪の増加は既に現実となっている。独身男性は総じて自尊心が低く、鬱病や暴力衝動の傾向が強いともされる。高学歴の女性が増えた反動で、男性が昔を懐かしむ傾向もあり、女性に従順さを説く講座が増えているのも事実だ。
ある男性講師は、自分の講座で、強い女性ほど(女性特有の)癌になりやすいと説いている。つまり「女でいたいと思わないから、そういう癌になる」という理屈だ。
中国美術における女性の描かれ方に詳しい英ノッティンガム大学のリンダ・ピットウッドによれば、セックスドールは「大勢の男が使い回せる、欲望の対象としての従順な女性という妄想」を体現している。「非常に有害な考え方だ。そうした女性観がセックスドールを通じて社会一般に広まる恐れがある」と、彼女は言う。
ロボットと結婚した男も
セックスドールはますます普及し、ますますリアルになっている。大連に本社を置くDSドールや新興企業のJサンテックは、スマホのアプリで簡単な言葉や動作をプログラムできる新製品を展開中だ(当局に摘発されたドールシェアの他趣も、アプリ操作で好みのうめき声を出せる人形を扱っていた)。