最新記事

中国社会

セックスドールに中国男性は夢中

2018年1月24日(水)16時10分
メイ・フォン(ジャーナリスト)

一方、「男性の権利」の擁護を掲げる活動家たちはネット上で、セックスドールの使用が広まれば、男たちはこれまでのように女に振り回されないで生きていけると主張している。セックスドールの普及はレイプなどの性犯罪を抑え、人身売買を減らす効果もあるはずだと論じる人もいる。

実際、人身売買の状況は深刻だ。米国務省は17年に、中国を世界の人身売買市場で最悪の国の1つと非難した。近隣諸国から中国に売られてきた女性の数は不明だが、農村部の嫁不足は深刻だから増えていることは確かだ。11~15年にベトナムで人身売買の被害に遭った女性は少なくとも4500人とされるが、そのうち70%は中国に売られており、相場は1人当たり1万8500ドルだという。

セックスドールが人身売買を減らすという主張は外国にもある。人形の使用が増えているのも中国だけではない。スペインには人形専科の売春施設がオープンしている。

例えば日本のような国だったら、セックスドールに群がるだけで変態扱いされるかもしれないが、中国の江西省の場合は切羽詰まった事態への応急措置といえるかもしれない。人口の男女比が大きく崩れ、女性100人に対して男性が138人になっているからだ(世界平均では105人)。

一方で暴力犯罪の増加は既に現実となっている。独身男性は総じて自尊心が低く、鬱病や暴力衝動の傾向が強いともされる。高学歴の女性が増えた反動で、男性が昔を懐かしむ傾向もあり、女性に従順さを説く講座が増えているのも事実だ。

ある男性講師は、自分の講座で、強い女性ほど(女性特有の)癌になりやすいと説いている。つまり「女でいたいと思わないから、そういう癌になる」という理屈だ。

中国美術における女性の描かれ方に詳しい英ノッティンガム大学のリンダ・ピットウッドによれば、セックスドールは「大勢の男が使い回せる、欲望の対象としての従順な女性という妄想」を体現している。「非常に有害な考え方だ。そうした女性観がセックスドールを通じて社会一般に広まる恐れがある」と、彼女は言う。

ロボットと結婚した男も

セックスドールはますます普及し、ますますリアルになっている。大連に本社を置くDSドールや新興企業のJサンテックは、スマホのアプリで簡単な言葉や動作をプログラムできる新製品を展開中だ(当局に摘発されたドールシェアの他趣も、アプリ操作で好みのうめき声を出せる人形を扱っていた)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CB消費者信頼感、4月は5年ぶり低水準 期待指数

ビジネス

米3月モノの貿易赤字、9.6%増の1620億ドル 

ワールド

石破首相、フィリピン大統領と会談 安保・経済関係強

ビジネス

米UPS、コスト圧縮へ2万人削減 アマゾン配送減に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 6
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中