最新記事

中国社会

セックスドールに中国男性は夢中

2018年1月24日(水)16時10分
メイ・フォン(ジャーナリスト)

広州大学工学部で学ぶフォン・ウエンコアンもメンバーの1人。彼らは当初、人形の体がこわばっていて冷たく、リアルでないと不満を述べたという。ヒットドール社は彼らの意見を聞きながら、さまざまな素材(熱可塑性エラストマーやシリコン)や乳房のサイズ(C~EE)、髪の毛(合成、動物、人毛)、人種(アフリカ人、アジア人、白人)を試した。

当時24歳のフォンは遊び半分で参加し、自分はヒットドールの顧客層に当てはまらないと思っていた。クラブのメンバーも、みんな「本物の女性を見つける」つもりでいた。

彼らに衛生面の心配はなかったのか。ホーによれば、彼の会社で造る人形の女性器は1回ごとの使い捨てだ。「かわいいクラブ」のメンバーは、お試し後の人形を自分のものにできたという。「すごい特典だ。ふつうに買えば15ドルはする」とホーは言う。ようやく市場に出せる程度の製品ができるまでに、学生たちには100体ほどの試作品を試してもらった。

ドールは社会に役立つ?

それにしても、東莞を訪問したことは有意義だった。中国南部の工業地帯である東莞には、この国の深刻な女性不足の問題が凝縮されていたからだ。

工場で働くのは女性労働者が多いが、工場や街を支配しているのは男たちだ。景気が最高潮だった頃、男性の幹部社員は妻と離れて何カ月も単身赴任していた。夜ともなればカラオケバーやクラブ、売春宿に繰り出す。だから街は「東洋のアムステルダム」と呼ばれていた。

しかし私の訪問から間もない2月14日のバレンタインデーに、政府は東莞で非常に厳しい売春摘発に乗り出した。中山大学のリン・ジアン教授(財政学)によれば、摘発で市内の総売り上げの1割に当たる約80億ドルが失われた。

以来、売春の都・東莞の「なんでもあり」の雰囲気は消え去った。しかし生身の女性たちの商売が下火になるにつれ、その代用品である人形の市場は盛んになっていった。

もちろん、セックスドールの使用増加に伴う懸念もある。本物の女性を物のように扱う傾向を助長したり、よその国のように暴力がはびこったりするのではないかという心配だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中