最新記事

中国社会

セックスドールに中国男性は夢中

2018年1月24日(水)16時10分
メイ・フォン(ジャーナリスト)

取材した会社ヒットドールの経営者ビンセント・ホーも、内需よりもむしろ輸出に期待していた。中国国内で独身男性が急増しているのは事実だが、「30歳の独身男なら人形は買わない。生身の女を買うよ」。ホーはそう言っていた。

とはいえ、当時からセックス玩具はよく売れていた。地方から都会に単身で出稼ぎに来る男性がたくさんいたから、需要は確実にあった。

学生たちが開発に協力

繁華街の街角にはセックス玩具の店があった。人工女性器などの商品が堂々と並び、男たちはネット上で、それら器具の使い勝手をオープンに議論していた。欧米社会に比べて、そうしたことに「後ろめたさ」を感じる空気はないようだった。

そうした需要に加え、中国には低コストの製造技術があるから、今でこそニッチなセックスドールの市場も大化けする可能性がある。13年当時、筆者はそんなことを考えていた。

ジーンズにレザージャケットで決めたホーは、50代初めの感じのいい人物だった。彼の会社はもともと輸出用のオフィス家具を製造していたが、コスト高で業績が悪化し、新製品に方向転換したのだった。

工場は小さく、カスタマイズした等身大の人形を月に10~12体ほど、ひつぎのような木箱に入れて出荷していた。ホーは工場内を案内してくれ、表情ひとつ変えずにゴム製の乳首をつまんだり、シリコン製の両脚を押し広げたりしてみせた。

「うちの乳首はとても頑丈だ」と言って、ホーは力いっぱい引っ張った。「人間のなら、こんな扱いには耐えられない」

この取材時点では、高級セックスドールといえばすべて外国製。当時の中国製は安物で、膨らませて使う持ち運び用の人形が主流だった。一方、米カリフォルニア州を拠点とするアビス・クリエーションズなどの有力メーカーは、多少の声を出せて手触りの温かい、しかもカスタマイズできるモデルを1体~1万ドルで販売していた。ホーはこれらをコピーし、安い価格で売り出そうと考えた。

ホーの会社は3年間、広州大学地区にある施設で試作品の開発を続けた。使い心地のテストには周辺の学生たちを動員した。驚いたことに、学生たちは互いに仲良くなり、頻繁に集まって食事やカラオケを楽しむようになり、よく知られた日本語を借りて「かわいいクラブ」というグループ名も付けていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中