トランプ政権誕生1年 ロシアが味わった「幻滅感」
昨年プーチン大統領は2度トランプ大統領に会ったが、米ロ首脳会談の計画については何も知らないとロシア当局者は言う。ロシア政府は11月に開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際に、米ロ首脳会談の場を設けようとしたが、失敗に終わった。
ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、2017年に最も失望したことの1つとして米ロ関係を挙げている。
米財務省は今月、プーチン大統領や当局と関係の深いロシアの富裕層を名指しする報告書を発表する予定だ。これが、制裁対象の個人や団体を拡大する前兆になるのではないかと、ロシア当局は危惧している。
今年中に米国政府は少なくともあと6件の報告書を発表する予定であり、結果として、ロシアのエネルギーや金融部門、メディアに対する新たな措置につながる恐れがあり、ロシア国債の購入禁止にまで至る可能性がある、とロシア当局者は予想している。
「米国の制裁は、ロシアが高リスク資産による資金調達をせざるを得なくすることにより、ロシア市場に参入する投資家が、これまでの10倍慎重になる効果を狙っている」。ロシア外務省と関係の深いシンクタンク、ロシア国際問題評議会(RIAC)で制裁問題を専門とするイワン・ティモフィエフ氏はそう指摘する。
ティモフィエフ氏は、新たな制裁に対するロシアの対策は「きわめて限定的」だと語る。
オバマ前政権時代より関係悪化
米ロ関係の悪化についてプーチン大統領は平静を装っており、12月の定例記者会見では、トランプ大統領による経済面での成果を称賛しつつ、米ロ関係はいずれ好転するとの考えを示した。
だがロシア当局者は、トランプ大統領が口にする米ロ関係改善への希望は本心からのものだと信じるものの、ロシア政策という点でトランプ氏は大統領としていわゆる「レームダック(死に体)」状態にあり、国内の政敵によって無力化されていると見ている。
結果として、ある意味で、オバマ政権時代よりも実質的に米ロ関係は悪化しており、高官レベルの接触も事実上行われていない、と彼らは不満を口にする。
「残念ながら、選挙期間中のトランプ氏の発言とは異なり、現政権の行動はオバマ政権の延長線上にある。分野によっては前政権よりもさらに攻撃的になっている」。ロシアのラブロフ外相は今月行われた年頭の定例記者会見でそう語った。