最新記事

デンマーク

ヒュッゲな国の「世界一幸せな刑務所」の狙いとは?

2017年12月25日(月)17時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

ストーストレム刑務所の設計を手掛けたデンマーク拠点の建築事務所「CFMøller」のデザイナー、マッツ・マンドラップは「再犯率を下げることを狙った」と語っている。これまでの伝統的な非人道的な刑務所ではない。

(教会や祈祷スペースは受刑者とスタッフの共有)


再犯率の低さの秘密はヒュッゲにある!?

マンドラップによれば「(従来の刑務所のように)過酷で刺激の少ない環境が、より多くの再犯者を生んでいる」。これは、統計データからも明らかという。デザインで状況をよくしたいというマンドラップの思いは刑務所の設備からも分かる。受刑者らは教会、食料品店、図書館、祈祷スペースを使用できるし、面会に訪れた子供には専用の遊び場もある。

そもそもデンマークの再犯率は27%で、米国の43%と比べるとはるかに優れた水準を保っている。The Architect's Newspaperは「厳しい罰を与えるよりも、受刑者の更生を支援するというスカンジナビアの伝統に沿って、社会的で実践的な技能を提供する場」を目指したというマンドラップの言葉を伝えている。しかし、こんなに居心地の良さそうな環境だとリピーターが生まれるのではないか、という疑問が浮かぶ。

「世界一幸福な国民」とも言われるデンマーク人の幸せの秘訣「ヒュッゲ」が取り上げられることが多くなってきたが、その定義や概念を説明するのは難しいとされる。そんなヒュッゲブームの火付け役となった『幸せってなんだっけ?――世界一幸福な国での「ヒュッゲ」な1年』(鳴海深雪訳、CCCメディアハウス)の著者でイギリス人ジャーナリスト、ヘレン・ラッセルの解釈は「感情的に抑圧されることなく、穏やかに喜びを感じること」だ。ストーストレム刑務所はまさにヒュッゲを具現化した施設と言えそうだ。

【参考記事】「ヒュッゲ」ブームの火付け役が日本人に伝えたい幸せのコツ


ニューズウィーク日本版のおすすめ記事をLINEでチェック!

linecampaign.png

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「誰もが気に入る」、波紋広がる「中東のリ

ビジネス

ECB政策金利、いずれ2%に到達する必要=ポルトガ

ビジネス

米24年12月貿易赤字、984億ドルに拡大 輸入額

ビジネス

米ディズニーの24年10─12月期決算、予想上回る
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 3
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 4
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 7
    【USAID】トランプ=マスクが援助を凍結した国々のリ…
  • 8
    「僕は飛行機を遅らせた...」離陸直前に翼の部品が外…
  • 9
    AIやEVが輝く一方で、バブルや不況の影が広がる.....…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 6
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 7
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 8
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギ…
  • 9
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中