北京から「底辺住民」を追い出す中国の不条理
■スマートフォンなどで注文すれば、レストランの料理を届けてくれる便利なオンライン出前サービス。中国では今年上半期にこのサービスの市場が41.6%拡大した。今では3億人の中国人が自宅やオフィス、さらには高速鉄道の車内にまで料理を届けてもらっている。大都市の通りをバイクで走り回る300万人以上の配達員の多くは出稼ぎ労働者だ。
■電子商取引大手アリババ・ドットコムは11月11日の「光棍節(独身者の日)」に毎年24時間のタイムセールを実施する。今年の売り上げは約260億ドル。膨大な数の商品は宅配会社数社を通じて顧客に届けられる。光棍節の注文数は8億件以上。配達はオンライン出前と同様、出稼ぎ労働者が担う。
■私が住む上海のマンションの向かい側には市内屈指の超高層ビルが建つ予定だが、昼夜を問わず工事現場で汗を流しているのも出稼ぎ労働者だ。中国の出稼ぎ労働者の約20%は建設業に従事している。都市の開発事業は彼らなしには成り立たない。
民間が支援に乗り出す
オンライン出前、宅配、建設――この3部門だけで中国全土で6500万人近い労働者が雇用されている。その圧倒的多数は出稼ぎ労働者だ。彼らがいなくなれば都市住民の生活が不便になるだけではない。中国がグローバル経済の覇者であり続けるには、テクノロジー、輸送、都市開発部門の成長が不可欠だ。この3部門を下支えする人々を排除すれば、影響は広範囲に及び、中国の国際競争力まで低下するだろう。
寒空の下、路頭に迷う人々を救おうと、早くも援助団体が職の斡旋やルームシェアの仲介に乗り出している。電子商取引大手の京東商城も自社の配達員に一時的な住居の提供を決めた。
彼らは分かっているのだ。低端人口は現代のグローバル社会を下支えする、なくてはならない働き手だ、と。
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From thediplomat.com
[2017年12月19日号掲載]