最新記事

イラン制裁

海外資金頼みのトルコに暗雲 米国の対イラン制裁違反に銀行が関与か

2017年12月4日(月)15時31分

11月29日、トルコ人実業家による米国の対イラン制裁違反に銀行が関与した疑いが浮上したことで、銀行の海外での資金調達に支障が生じる恐れが出てきた。写真はトルコリラ紙幣。2014年撮影(2017年 ロイター/Murad Sezer)

トルコの銀行は2000年の金融危機以降、自己資本の充実に取り組み、経営が新興市場で最も優良と称賛を浴びてきた。しかしトルコ人実業家による米国の対イラン制裁違反に銀行が関与した疑いが浮上したことで、銀行の海外での資金調達に支障が生じる恐れが出てきた。

外国資金に頼るトルコ経済にとって、資金流入ストップや対外流出といった最悪の事態にも発展しかねない雲行きだ。

海外投資家がトルコへの懸念を強める理由は種々ある。格付けは引き下げの可能性があり、二桁のインフレ率にもかかわらず政府は利上げに抵抗している。ただ、足元では米国の対イラン制裁に違反したとして複数のトルコ人が起訴され、トルコの複数の銀行がこの事件に巻き込まれる可能性が、懸念の中核を成している。

イランの政府や企業に外貨を融通したとして制裁違反に問われているトルコ人実業家は裁判で罪を認め、トルコ国有銀行ハルクバンクの幹部などが関わったとされる不正の概要を証言する見通しだ。

銀行の関与が事実なら多額の罰金が科せられ、金融機関やトルコ経済に深刻な影響が及んでもおかしくない。

BNPパリバ・アセット・マネジメントの新興市場債ポートフォリオマネジャー、アラー・ブシェリ氏は「実際に罰金処分が下れば、トルコの銀行に融資できるかどうかがはっきりするまで、トルコ向けの全融資が停止するだろう」と述べた。

トルコは銀行のドル建て債による調達が対外債務の3分の1を占める。銀行株は8月半ばから20%下落。トルコリラは対ドル、ユーロ相場はこの3カ月間で10%以上も下落し、2012年末からの下落率が50%を超えた。

トルコ紙ハベルチュルクはトルコの6つの銀行が数十億ドル相当の罰金支払いを求められる可能性があると伝え、規制当局や政府高官は報道内容を否定した。

しかしBNPパリバのブシェリ氏によると既にトルコの銀行のドル建て債には影響が出ており、国債との利回り差が平均で100ベーシスポイント(bp)に広がっている。一方で大手ノンバンクの社債の大半は、利回りが国債よりも低いという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ビットコインが10万ドルに迫る、トランプ次期米政権

ビジネス

シタデル創業者グリフィン氏、少数株売却に前向き I

ワールド

米SEC委員長が来年1月に退任へ 功績評価の一方で

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦争を警告 米が緊張激化と非難
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中