GQの表紙では女性だけがおへそを出す
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GQの表紙でへそを出したガドット(左)と下着姿のウィリアムズ GQ
<女性にだけ肌を露出させるのは、もういいかげんにやめるべき>
セクハラ騒動がアメリカ中に広がるなか、勇気を持って告発する人たちには拍手を送りたい。
しかし、肝心なのはこの後だ。本当の解決策はどこにあるのか。女性、男性、そして従来の性別で自らを区分しない人々が、みんな平等に、尊厳を持って扱われるようになるにはどうすればいいのか。報復を恐れずに性差別的な行動や考え方を拒否できる日は、いつ訪れるのか。
性差別をなくすには法律をどう変えるべきか。子供たちが旧来の考え方に染まらないようにするにはどうすればいいか。職場や政府、学校をどう変えるべきか――これらの問題に知恵を出し合って取り組む必要がある。
まずは小さな問題から考えてみたい。男性誌GQの米国版が先頃、17年の「今年の人」を発表した。人種差別に抗議して国歌斉唱の際に片膝をついたプロフットボールNFLの選手コリン・キャパニックは「シチズン・オブ・ザ・イヤー(今年の市民)」に選ばれた。
自身のトーク番組で鋭い政権批判ネタを続けたコメディアンのスティーブン・コルベアは「バッド・オンブレ・オブ・ザ・イヤー(今年の悪役)」に、NBA選手のケビン・デュラントは「チャンピオン・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。そして「ワンダーウーマン・オブ・ザ・イヤー」になったのが、映画『ワンダーウーマン』で主役を演じた女優ガル・ガドットだ。
この号は、4人それぞれの写真を使った4種類の表紙が作られた。ここで問題なのは、4人のうちガドットだけが肌を露出していること。男性3人は首元まで覆ったきちんとした服装だ。
細かい話だと思えるかもしれないが、社会を見る目はこういうことが積み重なって育つ。私たちは子供の頃から、こうした価値観を帯びた空気を無意識のうちに吸い込んでいる。
ガドットは、この衣装は嫌だと言うこともできたかもしれない。しかし雑誌の仕事を長くやってきた私の経験から言えば、撮影現場では指示どおりにやったほうがいいという空気が出来上がっていくのだ。
ガドットの衣装も写真もわいせつなものではない。だが、この衣装を着ている彼女はパワフルな女性には見えない。