最新記事

人種差別

米黒人世帯の純資産は8ドル、白人世帯の30,000分の1

2017年12月12日(火)18時00分
カルロス・バレステロス

白人警官の黒人に対する暴力に抗議するボストン市民(2015年4月) Brian Snyder-REUTERS

<比較的リベラルなボストンでも、黒人と白人の経済格差は驚くほど大きい。国連もアメリカの人権侵害の調査に乗り出した>

米東部ボストンの地方紙ボストン・グローブの調査報道班「スポットライト」が、人種差別が激しい町とされるボストンの評価の真偽を問うため、徹底調査を行った。各種データや調査結果を分析し、数百件のインタビューも実施した。

その調査の前編が、12月10日付の紙面に掲載された。人種問題は一時的に改善したとはいえ、ボストンにはいまだに人種差別が蔓延しているというのが、スポットライトの出した結論だ。

「自由の砦として知られるボストンで、私たちは、人種問題でも多くの進歩を遂げてきたのだと自らを欺いてきた」と記者は書く。「人種差別は昔と比べればたしかに目立たなくなり、暴力事件も減り、ボストンの町は全体的に寛容になった。だが、昔ほどあからさまではないにせよ、富や権力をめぐる不平等は変わっていないし、人種差別的な態度も根強い」

調査結果のなかで一際目を引くのは、ボストンに住む白人と黒人の間の経済格差だ。

資産とほぼ同じだけの借金

ボストン連邦準備委員会の統計データを分析したスポットライトは、ボストンに住む移民以外の黒人世帯の純資産の中央値が、わずか8ドルだと突き止めた。「車であれ、家であれ、貯金であれ、彼らは保有する全資産とほぼ同額の借金を背負っているということだ」

一方、ボストンの白人世帯の純資産の平均値は24万7500ドルで、黒人世帯の3万1000倍以上だ。

ボストンの黒人差別については、数十年にわたって定量的研究が行われてきた。

米南部諸州で「ジム・クロウ法」という人種隔離政策が敷かれていた20世紀初頭、移民や避難民として数万人の黒人がボストンに逃れたが、それに反発したボストンの白人は、黒人に対して敵対的な態度を取った。

白人と黒人の対立が最も激しかったのは1970年代、隔離政策を撤廃するためボストンの公立学校で白人居住区と黒人居住区の学生を相互の学区に通わせる計画を当局が実施した時だ。白人の保護者は激しく反対し、白人が圧倒的に多い公立学校では、黒人の登校を阻止する事件が頻発した。

あれから40年が経ち、かつてのボストンのあからさまな人種差別は影を潜めた。だが、組織的な人種差別がいまだに黒人の足かせとなっている。

スポットライトは、今回の調査結果と同紙の記者が1983年に書いた一連の記事とを比較した。結果、ボストンの公職や管理職のうち、黒人が占める割合は、四半世紀近く経ってもわずか0.1%しか増えていなかった。しかも1983年も現在も、ボストンでは黒人の失業率が白人の2倍も高いことも分かった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

イオン、イオンモールとディライトを完全子会社化

ワールド

中国実弾演習、民間機パイロットが知ったのは飛行中 

ビジネス

中国の銀行、ドル預金金利引き下げ 人民銀行が指導=

ビジネス

日経平均は大幅反落、一時3万7000円割れ 今年最
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:破壊王マスク
特集:破壊王マスク
2025年3月 4日号(2/26発売)

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 3
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身のテック人材が流出、連名で抗議の辞職
  • 4
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 5
    日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻…
  • 6
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 7
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 8
    老化は生まれる前から始まっていた...「スーパーエイ…
  • 9
    【クイズ】アメリカで2番目に「人口が多い」都市はど…
  • 10
    令和コメ騒動、日本の家庭で日本米が食べられなくな…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 3
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映…
  • 6
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 7
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 8
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中