持続可能な社会を考える国際写真賞「プリピクテ」
<西野壮平>
ジオラマ・マップ・ロンドン 2010
シリーズ名:ジオラマ・マップ 2010-2016 © Sohei Nishino, Prix Pictet 2017
数ヶ月都市を歩き、見晴らしのよい場所を探して、数百本ものフィルムに景観を記録する。撮影した全てののべ数万枚の写真を手焼きして切り取った写真1枚1枚を、自らの記憶と共にコラージュして、都市の地図を再構築していく。単なる鳥瞰図ではない。あえて、スケールを変えたり、場所もしばしば反復することで、私たちが持つ時間と場所に対する記憶の曖昧さを示す。遠くからは抽象画のようにも見え、近くに寄って細部を見ると、都市を構成する生命とみなぎるエネルギーが織りなす小宇宙が広がっている
<トーマス・ルフ>
ma.r.s.08_II 2012
シリーズ名:ma.r.s, 2010-2013 ©Thomas Ruff, Prix Pictet 2017
作品の素材として、NASAの探査船が調査、研究のために撮影した衛星写真を使用している。火星の表層が極限までのクローズアップで映し出された写真は、地球に送信するデータの重さに制限があるために、白黒で記録されているが、その写真にデジタル加工で、一般に火星の光景として認識されている色を加えたり、異質な印象を創り出すために意図的に色を変えたりすることによって、宇宙に真の色などないことを喚起させる。探査船のカメラが切り取る、火星の「風景写真」の可能性を探る作品
<川内倫子>
無題 2012
シリーズ名:あめつち 2012
冬枯れの土地に火を放ち、草原を再生する阿蘇山の野焼きは、毎年早春に行われてきた行事で、1300年以上の歴史がある。「あめつち」とは「天地」を意味する。展示される作品は、複数の写真から構成されたシリーズの一部で、焼ける大地と夜空の写真を並列させることで、天と地、光と闇、生と死などの二元性が表現される。現実世界と夢や精神世界とを同化させながら、ものごとの起源と人間とのつながりを見つめ、最終的には記憶や時間を超越した目には見えない共有空間、宇宙的広がりへとつながっていく
他の展示作家:
セルゲイ・ポノマリョフ
ムネム・ワシフ
パヴェル・ヴォルベルグ
マイケル・ウルフ
サスキア・グローンバーグ
ベアテ・グーチョウ
□プリピクテ国際写真賞『Prix Pictet SPACE(宇宙・空間)』東京巡回展
【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
ご登録(無料)はこちらから=>>