最新記事
プリピクテ国際写真賞・東京巡回展

持続可能な社会を考える国際写真賞「プリピクテ」

2017年11月22日(水)16時40分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

最優秀賞 <リチャード ・ モス>  イドメニ 2016 シリーズ名:ヒート・マップス  © Richard Mosse, Prix Pictet 2017

<持続可能な社会、環境に関わる優秀な写真作品を選出する国際写真賞「プリピクテ」の世界巡回展が、今週から東京で開催>

軍事監視用赤外線サーマルカメラでフェンス越しに撮影された難民キャンプ。大きく引き延ばされた写真には、人々の極限状態が克明に記録されている。しかし、熱感知カメラで捉えられた人間たちは、顔立ちや肌が曖昧で、アイデンティティを剥奪された単なる生体の痕跡として示される。このカメラの視線は、難民を拒絶する社会の目に通ずるのではないか。

持続可能な社会、環境に関わる優秀な写真作品を選出する国際写真賞「プリピクテ」の世界巡回展が東京にやってくる。スイスの投資や資産管理を手がけるピクテ・グループが、2008年に自らの名前を冠して創設した写真賞で、毎年、「成長」「権力」「消費」など、創造的思考のために幅を持たせたテーマが掲げられてきたが、7回目となる今回の「スペース(宇宙、空間)」についても、写真家たちによって様々な解釈がなされている。最優秀賞には「ヒート・マップス」(写真上)を制作したリチャード・モスが選出され、10万スイスフラン(約1140万円)の賞金が授与された。 

今年の「プリピクテ」は、世界中のノミネーター約300名から、あらゆるジャンルの写真作品を制作する写真家、アーティスト700名以上が推薦され、英外務大臣付気候変動特別代表サー・デービッド・キング教授を審査員長に、写真家セバスチャン・サルガド他、著名な博物館、美術館のキュレーターなど9名の審査員によって選考された。恵まれた賞金額に注目が集まりがちだが、毎回選出される作品は、現代アートとして非常に評価が高いものばかり。短い歴史ながら、写真賞として最も権威があるもののひとつとして、世界的に注目を集めている。

11月23日(木)~12月7日(木)まで、東京・代官山ヒルサイドフォーラムで開催されるプリピクテ国際写真賞『Prix Pictet SPACE(宇宙・空間)』東京巡回展では、最終審査の対象になった12作品が展示される。

【参考記事】軍事用カメラが捉えた難民のむき出しの生

ファイナリスト
<マンディ・パーカー>
アイルランド、コーク州コーヴのグラウントンで採集されたサンプル(ベビーカーの車輪)2015

シリーズ名:漂流の果てにーーあまり知られていない生き物  © Mandy Barker, Prix Pictet 2017

pictet02.jpg

海に漂流するプラスチック片を使用し、プランクトンの顕微鏡標本ように見える写真を創作したもの。その創作物は、海洋汚染により、プランクトンが微細なマイクロプラスチックを摂取して化学物質を取り込んだ「生物」として、作家がプラスチックを示す言葉を潜ませた独自の「学術名」を与えている。食物連鎖の基礎部分に位置するプランクトンは、より大きな海洋生物に捕食され、最終的には私たちの食卓に上る。1800年代初期の海洋生物学者ジョン・ヴォーン・トンプソンが制作したプランクトンのスライドから着想を得ている

<ベニー・ラム>
閉所 01 2012
シリーズ名:細分化されたアパート 2012 © Courtesy of Benny Lam (photographs), Kwong Chi Kit and Dave Ho (concept), Prix Pictet 2017

pictet03.jpg

香港は世界で最も豊かな都市のひとつとされているが、その繁栄の裏には深刻な貧困問題がある。新たに移住した家族、高齢者、失業者の生活は苦しく、平均ひと部屋3.7平方メートルという違法に細分化されたアパートに、10万人以上が暮らしている

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、ガス輸出・石油掘削促進 就任直後に発表

ビジネス

トタルエナジーズがアダニとの事業停止、「米捜査知ら

ワールド

ロシア、ウクライナ停戦で次期米政権に期待か ウォル

ビジネス

英インフレ上振れ懸念、利下げ段階的に=ロンバルデリ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中