最新記事

アジア歴訪

アジア歴訪で自分は人気者と勘違いしたトランプが危ない

2017年11月14日(火)18時30分
ジェイソン・ルミエール

アメリカ大統領なら表向きはとりあえず歓迎するのが当たり前なのに(11月9日、北京) Damir Sagolj-REUTERS

<各国の厚遇をトランプは地政学的現実と勘違いしかねない。事実、ドゥテルテがラブソングを歌うと超法規的殺人も不問にしてしまった>

ドナルド・トランプ大統領は旅行好きではないが、外遊先で受けるもてなしはすっかり気に入ったようだ。

トランプは11月13日、アジア5カ国歴訪で受けた待遇について、「おそらく誰も受けたことがない手厚い歓迎だった」と述べた。

どのアメリカ大統領より歓迎された、とトランプが自慢したのはこれが初めてではない。だが「海外におけるトランプ人気」の現実はまったく違う。さまざまな首脳や独裁的な政治指導者からトランプが受ける歓待と、一般の人々の彼に対する考え方が対照的であることは、世論調査や抗議活動が証明している。

シンクタンクのピュー・リサーチ・センターが今春、37カ国で実施したトランプに関する調査によると、外交でバラク・オバマ前大統領よりトランプにいい点をつけた国はたった2カ国だった。また、トランプを信頼していると回答した割合は、37カ国平均で22%にすぎない。

外国政府の歓待は別として、外遊するトランプの不人気を示す証拠は山のようにある。トランプが「誰も受けたことがない歓迎」と口にしたフィリピンの首都マニラでは、多くの人がアメリカ大使館に向かってデモ行進を行った。中には、4メートル大のかぎ十字の形に手がついたトランプ人形を作って燃やした人もいた。

社交辞令を解しない

フィリピン訪問に先駆けてトランプが訪れた日本と韓国でも、トランプに対する抗議デモが行われた。トランプに対する抗議がなかったのは、強権的な政治体制の国だけのようだ。そうした国々では、トランプはメディアから質問を受けたり、一般の人から露骨な敵意を向けられたりすることもない。

トランプは過去にも、行く先々で惜しみなく浴びせられるお世辞を真に受けてきた。7月のフランス革命記念日にパリを訪問した後にトランプが米紙に述べたところによると、フランスに行く気になった理由の1つは、同国のエマニュエル・マクロン大統領から、「フランスではあなたは人気がある」と言われたからだという。しかし、ピュー・リサーチ・センターの調査によれば、トランプを信頼していると答えたフランス人はたったの14%だ。

またトランプは、ポーランドのワルシャワを訪問した時についても、「大変な歓待を受けた」と言っている

トランプが、彼を公然と批判した指導者からすら歓待を受けるのはなぜだろう。確固たるイデオロギーを持たず、態度がころころと変わる大統領に取り入る一番の方法は、大げさなお世辞を並べることだと各国の指導者が悟ったからかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中