北朝鮮外交官が酒の密売? パキスタンの窃盗被害で発覚
怒りと動揺
北朝鮮外交官のHyon氏は、10月4日に中国出張から戻ってイスラマバードの自宅が窃盗被害に遭ったことを発見すると、すぐさま近くの警察署に被害を届け出た。
「彼は怒り、動揺していた」と、Hyon氏から事情を聞いた前出の警察官Hussain氏は振り返る。「そして、非常に心配していた」
ロイターが確認した警察書類によると、Hyon氏は警察に対し、ウィスキー「ジョニー・ウォーカー・ブラック・ラベル」1200本、ワイン200ケース、ビール60箱、テキーラ数十本、ダイヤモンド2つ、現金3000ドルが盗まれたと説明した。闇市場では、ジョニー・ウォーカーのウィスキー1本は80ドルで取引されており、1200本は9万6000ドル相当になる。
Hyon氏と北朝鮮大使館は警察に対し、アルコール類は合法的に輸入されたものだと説明し、それを証明する書類も提示したという。
ロイターが確認した外務省の書類によると、事件から1週間後、北朝鮮大使がパキスタン外務省の儀典担当官に面会し、Hyon氏が盗まれた品の返却を求めた。
外交特権を持つとみられるHyon氏が捜査対象となっているかは不明だ。
ロイターが確認した書類によると、北朝鮮大使館は2016年3─12月、4度にわたって酒類の輸入注文を出している。この書類からは、大使館の外交官が個人的に必要とする合理的な量をはるかに上回るアルコール類を輸入している大使館の実態が浮かび上がる。
この9カ月の間に、北朝鮮大使館はアラブ首長国連邦を拠点とする輸出業者「トゥルーベル」を通じ、フランスのボルドーワイン1万0542本を輸入していた。4度の注文の総額は7万2867ドルで、それにはハイネケンやカールスバーグといったビール1万7322缶や、シャンパン646本も含まれていた。
トゥルーベルの事業所の電話に答えた人物はロイターに対し、同社は現在では北朝鮮と取引していないと述べたが、それ以上説明しなかった。