最新記事

欧州

欧州、次の「トランプ爆弾」警戒 米国のイラン核合意破棄に衝撃

2017年11月1日(水)16時41分

10月27日、トランプ米大統領(右)が今月、イラン核合意の破棄を示唆したことに衝撃を受けた欧州各国は、次に同大統領がどのような行動に出るのか頭を悩ませている。写真左はメイ英首相。米NY市で9月撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)

トランプ米大統領が今月、イラン核合意の破棄を示唆したことに衝撃を受けた欧州各国は、次に同大統領がどのような行動に出るのか頭を悩ませている。

外交官らは、貿易戦争や北朝鮮を巡る軍事衝突、冷戦時代に締結された軍縮協定の崩壊など、欧州と米国の関係が危機に陥りかねないシナリオを思い描いている。いずれかが実際に起きた場合、第2次世界大戦後の同盟関係を、継続することが可能なのかを彼らは危惧している。

トランプ政権が9カ月前に誕生してから、独仏英の政府は、トランプ発言に対する警戒心と、同政権の「大人」たちや同盟諸国からの圧力によって、最悪な事態を招きかねない同大統領の衝動は抑えられるという不確かな感覚とのあいだで揺れ動いている。

だが、マクロン仏大統領、メルケル独首相、メイ英首相が直接訴えたにもかかわらず、トランプ大統領がイラン核合意の順守を否認したことは計算違いだった、と外交官や政治家、専門家らは口をそろえる。

大きくて持続的な関係崩壊の懸念を抱くことなく、欧州がトランプ大統領の残りの任期3年を切り抜けられるという自信はもはや消え去った。緊張が高まった場合、トランプ大統領が側近や同盟国に耳を貸すという確信もない。

とりわけドイツの不安は大きい。特に防衛・安保問題において、フランスや英国に比べ、米国に対する依存度が高いからだ。

「ドイツ政府は絶望感を抱いている。トランプ氏が何が問題なのか分かっておらず、歴史的要因を理解していないという懸念がある」と、元駐米ドイツ大使のウォルフガング・イッシンガー氏は指摘。

「欧州と米国の関係は信頼が全て。その意味では、イランに関する(トランプ氏の)決定は、われわれを新たな段階へと進ませた。信頼を裏切る行為だ」

信頼崩壊

イランによる核合意の順守を認めないとするトランプ大統領の決断は、必ずしも同合意の破棄を意味するものではない。その決断は米議会次第であり、同議会はイラン政府に新たな制裁を科すかどうかを決めなくてはならない。

だが、画期的な外交的成果が著しく損なわれたというのが、欧州におけるほぼ一致した考えである。

メルケル首相は5月、欧州は米国を頼れず、自らの運命は自らの手で握らねばならないと述べ、信頼の崩壊を示唆した。

この直前に、伊シチリア島で開催された主要7カ国(G7)首脳会議で、トランプ大統領は、新たな気候変動の枠組みである「パリ協定」にとどまるよう求める同盟諸国からの訴えを拒否していた。

その後、選挙とそれを受けた連立政権樹立に忙しいメルケル首相は、欧州と米国との関係やトランプ氏について、ほとんど語っていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トルコ中銀2.5%利下げ、主要金利47.5% 「イ

ビジネス

米新規失業保険申請は1000件減の21.9万件、1

ワールド

イスラエル、イエメンのフーシ派関連施設を攻撃 空港

ワールド

トランプ氏、駐パナマ大使を選出 運河巡り管理権の奪
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 3
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部の燃料施設で「大爆発」 ウクライナが「大規模ドローン攻撃」展開
  • 4
    「とても残念」な日本...クリスマスツリーに「星」を…
  • 5
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 6
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 7
    日本企業の国内軽視が招いた1人当たりGDPの凋落
  • 8
    滑走路でロシアの戦闘機「Su-30」が大炎上...走り去…
  • 9
    世界がまだ知らない注目の中国軍人・張又俠...粛清を…
  • 10
    韓国Z世代の人気ラッパー、イ・ヨンジが語った「Small …
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 5
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 6
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 7
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 8
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中