欧州、次の「トランプ爆弾」警戒 米国のイラン核合意破棄に衝撃
10月27日、トランプ米大統領(右)が今月、イラン核合意の破棄を示唆したことに衝撃を受けた欧州各国は、次に同大統領がどのような行動に出るのか頭を悩ませている。写真左はメイ英首相。米NY市で9月撮影(2017年 ロイター/Kevin Lamarque)
トランプ米大統領が今月、イラン核合意の破棄を示唆したことに衝撃を受けた欧州各国は、次に同大統領がどのような行動に出るのか頭を悩ませている。
外交官らは、貿易戦争や北朝鮮を巡る軍事衝突、冷戦時代に締結された軍縮協定の崩壊など、欧州と米国の関係が危機に陥りかねないシナリオを思い描いている。いずれかが実際に起きた場合、第2次世界大戦後の同盟関係を、継続することが可能なのかを彼らは危惧している。
トランプ政権が9カ月前に誕生してから、独仏英の政府は、トランプ発言に対する警戒心と、同政権の「大人」たちや同盟諸国からの圧力によって、最悪な事態を招きかねない同大統領の衝動は抑えられるという不確かな感覚とのあいだで揺れ動いている。
だが、マクロン仏大統領、メルケル独首相、メイ英首相が直接訴えたにもかかわらず、トランプ大統領がイラン核合意の順守を否認したことは計算違いだった、と外交官や政治家、専門家らは口をそろえる。
大きくて持続的な関係崩壊の懸念を抱くことなく、欧州がトランプ大統領の残りの任期3年を切り抜けられるという自信はもはや消え去った。緊張が高まった場合、トランプ大統領が側近や同盟国に耳を貸すという確信もない。
とりわけドイツの不安は大きい。特に防衛・安保問題において、フランスや英国に比べ、米国に対する依存度が高いからだ。
「ドイツ政府は絶望感を抱いている。トランプ氏が何が問題なのか分かっておらず、歴史的要因を理解していないという懸念がある」と、元駐米ドイツ大使のウォルフガング・イッシンガー氏は指摘。
「欧州と米国の関係は信頼が全て。その意味では、イランに関する(トランプ氏の)決定は、われわれを新たな段階へと進ませた。信頼を裏切る行為だ」
信頼崩壊
イランによる核合意の順守を認めないとするトランプ大統領の決断は、必ずしも同合意の破棄を意味するものではない。その決断は米議会次第であり、同議会はイラン政府に新たな制裁を科すかどうかを決めなくてはならない。
だが、画期的な外交的成果が著しく損なわれたというのが、欧州におけるほぼ一致した考えである。
メルケル首相は5月、欧州は米国を頼れず、自らの運命は自らの手で握らねばならないと述べ、信頼の崩壊を示唆した。
この直前に、伊シチリア島で開催された主要7カ国(G7)首脳会議で、トランプ大統領は、新たな気候変動の枠組みである「パリ協定」にとどまるよう求める同盟諸国からの訴えを拒否していた。
その後、選挙とそれを受けた連立政権樹立に忙しいメルケル首相は、欧州と米国との関係やトランプ氏について、ほとんど語っていない。