欧州、次の「トランプ爆弾」警戒 米国のイラン核合意破棄に衝撃
一方、フランスのマクロン大統領は、革命記念日の祝賀式典に招待するなど、トランプ大統領に対して最大限のもてなしをしている。2人は先月、国連でも会談している。
「(トランプ大統領の)考えを変えることを諦めてはいない」と、気候変動とイランを巡るトランプ大統領の姿勢について、マクロン大統領はニューヨークでこう述べた。
しかし、イラン核合意の否認は、米国政府が今後さらに破壊的な「爆弾」を一斉に落とす前兆かもしれない、と欧州当局者らは懸念している。
次は通商を巡って衝突が起こる可能性が高く、トランプ大統領が再交渉し、破棄する構えも辞さない北米自由貿易協定(NAFTA)が「試金石」だと、欧州のある上級外交官は語った。
NAFTAが崩壊すれば、欧州企業、とりわけメキシコで生産し米国に輸出しているドイツの自動車メーカーは大きな打撃を受ける可能性がある。
また、トランプ大統領が鉄鋼製品への関税を導入するなら、中国だけでなく欧州の輸出企業も直撃を受けることが懸念される。
「これまでのところ、トランプ氏は通商について、いろいろと吠え立ててはいるが、まだ噛みついてはいない。だからといって、ずっとそのままでいるという訳ではない」と、この欧州外交官は話した。
「極めて保護主義的な措置に対する心構えが必要だ。欧州企業に対して、直接的もしくは間接的に不利益を与えるいかなる措置も、負のスパイラルをもたらすだろう」
反米主義
もう1つの懸念分野は北朝鮮である。朝鮮半島で軍事衝突が起きた場合、欧州内の反応は「イラク戦争と同じくらい混乱」しかねない、とドイツのシンクタンク「国際公共政策研究所(GPPI)」のソーステン・ベナー所長はみている。
欧州世論は、そのような衝突において、米国を侵略者と見なしかねず、そうなれば反米感情は高まり、欧州の指導者がトランプ氏を支持するのを困難にさせ、いかにそれが非現実的であろうと、米国と袂を分かつことを求める声が一段と高まることになりかねない。
「当面はトランプ氏に向き合わねばならず、同氏が去っても(関係が)修正されないかもしれないという事実に目を向けるべきだ」と、ドイツのある外交官はロイターに語った。「これは現実に存在する問題で、対処しなくてはならないということを、人々はまだ理解していない」
こうした反米感情を懸念して、ドイツを拠点とする外交政策専門家ら約10人は今月、トランプ氏を理由に米国に背を向けるドイツ政府に警鐘を鳴らす声明を発表した。
前出のイッシンガー元大使もこの声明に賛同しており、対米関係がさらに悪化しかねないことを懸念している。