トランプ「国家の恥」オピオイド乱用に衛生非常事態を宣言
10月26日、トランプ米大統領は、医療用鎮痛剤「オピオイド」の乱用に関する「全国的な公衆衛生の非常事態」を宣言した。写真はフィラデルフィアでヘロイン摂取などに使われた注射針(2017年 ロイター/Charles Mostoller)
トランプ米大統領は26日、医療用鎮痛剤「オピオイド」の乱用に関する「全国的な公衆衛生の非常事態」を宣言した。大統領が数カ月前に約束していた、問題解決のために新規の連邦予算獲得が可能となる「国家非常事態」の宣言は見送られた。
政府高官は記者団に、公衆衛生の非常事態宣言によって連邦資源の再配分を指示したり、規制緩和を実施することで、オピオイド乱用に対応できると説明した。
民主党議員などからは、追加的な予算が付かないこうした宣言は意味がないとの批判が出ている。また対策推進団体や専門家も、踏み込み不足だと指摘した。
共和党議員は、今回の大統領の宣言について、危機に立ち向かうための重要なステップだと評価した。
「この(オピオイド乱用の)まん延は、国の公衆衛生における非常事態だ。米国人として、これが続くことを許すわけにいかない」と、共和党のトランプ大統領はホワイトハウスで語った。
トランプ大統領はオピオイド乱用問題を「国家の恥」であり、「人間の悲劇」と呼んだ。大統領夫人として、この問題を最重要課題の1つと位置づけるメラニア夫人も、「誰にも起こり得ることだ」と述べた。
トランプ大統領はまた、亡くなった自身の兄フレッド・トランプ氏がアルコール依存症に苦しんだ経験を引き合いに出した。兄のアドバイスに影響を受けた大統領は、アルコールを口にしないことで知られる。
米疾病予防管理センター(CDC)によると、オピオイド乱用で2015年には3万3000人強が亡くなっており、死亡者は増え続けている。まん延する薬物過剰摂取の対策を講じるためには、今回の宣言では不十分だとの失望を表明した関係者や専門家もいた。
主に処方鎮痛薬として使われるオピオイドのほか、ヘロインやモルヒネの50─100倍強力だとされるフェンタニルの乱用による過剰摂取が増加している。CDCによると、米国では1日100人以上がこれに関連した過剰摂取で死亡している。