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イラン核合意

対イラン交渉には「なだめ役」も必要だ

2017年10月19日(木)10時40分
アレックス・バタンカ(米中東問題研究所上級研究員)

イラン政府の弱点を突け

イランの体制内では、雇用拡大の加速が必須課題だという点で全ての派閥の認識が一致している。貧困と汚職への不満が暴動に発展する事態は避けたい。雇用は、現体制の政治的命運を握る問題なのだ。

イランが世界経済への復帰を果たすカギを握っているのがヨーロッパ諸国だ。ロウハニ政権は発足以来、経済再生の柱としてヨーロッパ企業の誘致を推進してきた。

この方針は、ロウハニが9月の国連総会で行った演説からも明らかだ。イランはアメリカと付き合わなくても結構だが、アメリカがイランとヨーロッパのビジネス上の関係を断ち切ろうとすれば、核合意の継続は危うくなると、ロウハニは述べた。

ヨーロッパとのビジネス上の関係の強化は、イランに多くの恩恵をもたらしている。今年上半期のイラン・ヨーロッパ間の貿易高は、前年比で94%増えた。技術移転への期待もあるし、大型プロジェクトへの融資も始まりつつある。

問題は、制裁解除が経済の好転を生んだ結果、イラン国民が経済の復活まであと一歩という期待を抱くようになったことだ。その期待に応えられなければ、体制が揺らぎかねない。

ここに、トランプ政権とヨーロッパ諸国のチャンスがある。経済問題に絡めてイランに選択を突き付ければいいのだ。イランが中東地域での勢力拡張を目指し続ければ、ヨーロッパはイランとの経済的関わりから手を引く。

しかし、イランが経済的安定を最優先にすれば、ヨーロッパはイランのビジネス上のパートナーであり続ける。このどちらを選ぶのかと、イラン政府に迫ればいい。

対イラン政策では、ヨーロッパの経済的な影響力を利用して譲歩を引き出すのが最善の策だ。トランプは、自らは「悪者」の役割を担うにしても、この点を理解しておく必要がある。

From Foreign Policy Magazine

<本誌2017年10月17日発売最新号掲載>

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