最新記事

マイノリティ

【写真特集】LGBTQの親を持つ子供たち

2017年10月25日(水)18時00分
Photographs by Gabriela Herman

<Savanna>私はアリゾナ州フェニックスの美術高校に親友と一緒に車で通っていた。ある日、学校に行く車でラジオを聞いていたら同性婚の話題が流れ、女性視聴者からのメールが読み上げられた。「私たちが心配しなければならないのは、同性愛者の子供たちだ」「そういう人たちに育てられるのはよくない」。私は激怒して、ラジオ局に電話をした。「私はゲイの両親を持つ子供です。あのメールには愕然とした。誰の同情も要らない。私の両親は素晴らしい」って怒りを爆発させた。

<アメリカで同性愛の親を持つ子供は少なくとも600万人――「私は困難を経験したが、次の世代は違うはず」>

私の母は同性愛者。そう言えるようになるまで、長い時間がかかった。

20年以上前、私が高校生だった頃に母はカミングアウトした。間もなく父と別れ、最終的には長年のパートナーだった女性とマサチューセッツ州で結婚した。

私にすれば衝撃的で、海外留学中の1年間はほとんど母と口を利かなかった。特に同級生には隠さなくてはと思ったし、絆の強い家族の中でもその話題はタブーだった。

私は29歳だった7年前、肖像写真プロジェクト「キッズ」を始めた。同じような境遇の人の話を聞き、写真を撮るためだ。私は世界中のいろいろな都市に住んだが、同性愛の親に育てられた人に会ったことはなかった。

LGBTQ(性的少数者)の親や保護者を持つ人々を支援する団体COLAGEを教えてくれたのは妹だ。ニューヨークのイーストビレッジのアパートで、若者たちが家族のカミングアウトの話をするのを聞いた夜から、撮影した子供は100人近く。彼らに会うことは私自身のセラピーにもなった。

シンクタンクのウィリアムズ研究所の推計では、アメリカで同性愛の親を持つ子供は少なくとも600万人。私は困難を経験したが、次の世代は違うはず。LGBTQへの差別なんて、歴史の中の話になるだろう。

ガブリエラ・ハーマン(写真家)


pplgbtq01.jpg

私にとって決定的なのは、
無条件に愛してくれる人が2人いるということだ
「私は世界で一番幸せな子供だ」って思う

<Jaz>
父が亡くなったのは私が2歳の頃。両親が離婚しようとしていた時期でもあった。母は精神的な問題を抱えるようになり、同性愛者と自覚していないことが問題の原因だと気付いたんだと思う。やがてレズビアンのチャットルームで今の妻タミーに出会った。結婚すると聞かされて、私は「はぁ?」ってなったけど。私たちが引っ越したニューヨーク州ロチェスター郊外の町はリベラルじゃなくて、親が同性愛者なんて誰にも言えなかった。大きな転機はたしか14歳のとき。3人でテーマパークに行き、タミーに「たまにはママって呼んでもいい?」と聞いた。彼女が泣きだして、それがすごく愛しかった。


pplgbtq02.jpg

<Malina>
私の父は弁護士で、生殖補助医療関連の法律が専門。彼は、自分と同じゲイの父親やレズビアンのカップルが代理出産で子供を持つのを支援する団体を立ち上げた。私は、生殖補助医療を使ってゲイの父親たちの間に生まれた子供の最初の世代。当時は体外受精の技術もまだまだで、12個の卵子を受精させるのに父たちは大金を使ったようだ。最後の1個はかなり状態が悪くて、これでうまくいかなければ子供は諦めようと思ったと父は話していた。それが私になった。ゲイの父親がいるのは、私が望める中で最も素晴らしいことの1つ。大変なこともあるけど、世界に関する得難い視点を与えてくれる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米バークシャー、24年は3年連続最高益 日本の商社

ワールド

トランプ氏、中国による戦略分野への投資を制限 CF

ワールド

ウクライナ資源譲渡、合意近い 援助分回収する=トラ

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 2
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映像...嬉しそうな姿に感動する人が続出
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 7
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    見逃さないで...犬があなたを愛している「11のサイン…
  • 10
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 7
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 8
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中